北朝鮮当局が若者の「体制離れ」を防ぐため、思想教育を一層強化している。しかし現場の青年層では、こうした活動を「形式的な儀式」に過ぎないと受け止め、反感を募らせているとの証言が伝えられた。
平安南道の情報筋が2日、韓国デイリーNKに明かしたところによると、先月末、開城市の社会主義愛国青年同盟(以下・青年同盟)は「青年同盟の歴史と使命、役割」をテーマに講演会を開催した。これは8月28日の「青年節」に合わせた政治事業の一環で、青年層の忠誠心や愛国心、社会主義思想を鼓舞することを目的としたものだ。
講演では、1926年10月に金日成が「打倒帝国主義同盟」を結成した歴史や、1927年8月の「朝鮮共産主義青年同盟」設立の意義が解説された上で、現在に至る青年運動の歩みが紹介された。また、青年同盟員の義務と役割が説かれ、さらに金正恩総書記が2021年の第10回青年同盟大会で提示した「3大課題」も繰り返し強調された。すなわち、①全青年を社会主義信念を持つ愛国青年として準備させること、②党第8回大会の決定を貫徹する実践闘争の中で社会主義建設者に育てること、③社会主義的道徳と文化の担い手とすること、である。
青年同盟幹部は講演の中で「困難な現場に進んで赴く青年が社会主義愛国青年の本分を果たしている」と称え、「目の前の課題に責任を尽くそう」と檄を飛ばした。
しかし、参加した青年らの反応は冷ややかだった。ある同盟員は「自ら志願して困難な現場へ行く人間など一人もいない。皆が半ば強制的に動員されていることは誰もが知っている。そんなことを誇らしげに語られては不快でしかない」と不満を漏らした。別の若者は「青年同盟の沿革を暗記したところで思想が強化されるわけでも、非社会主義的現象が消えるわけでもない。結局は幹部自身が形式主義に陥っている」と厳しく批判した。
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このように、当局は青年を体制の主力として思想教育を繰り返しているが、若者の多くは「見せかけの行事」と捉え、真剣に受け止めていない。背景には、崩壊した配給制度がある。青年らは自力で生活を切り開かざるを得ない世代であり、いくら社会主義理念を説かれても心から共鳴することは難しい状況だ。
情報筋は「国家も、今の青年世代が配給や供給に依存せず、自力で生きていることを承知している。だからこそ忠誠心や愛国心を強調しているが、実際には『牛を失ってから牛小屋を修理するようなもの』だ」と皮肉った。その上で「青年を体制の支柱に育てようと懸命に試みているが、思想教育の効果は乏しく、現場の反発ばかりが積み重なっている」と語った。
