北朝鮮の金正恩が慈江道地域で労働者らと牡丹峰楽団の公演を観覧後に実施した演説で、自筆で書いたと見られる演説文を朗読する写真が24日、公開された。金正恩直筆の演説文が公開されたのは初めて。
同日の労働新聞の1面に掲載された写真には、青色の自筆で書かれた演説文を金正恩が持っており、ペンで線を引き修正した部分も見られ、金正恩が演説文を自ら修正したものではとの推測が出ている。
脱北者によれば、一般的に中央党の金正恩1号行事担当部署が印刷活字で演説文を作成し、これを金正恩が受け取り承認するようになっている。しかし今回公開された演説文はペンで修正された部分が見られ、金正恩自ら作成したものとの分析が出ている。1号文書に匹敵する金正恩の演説文に修正を加えられる人物は最高指導者、金正恩のみが可能なためである。
金正恩の自筆の演説文から緻密さに欠ける彼の統治スタイルがうかがわれるとの指摘も出ている。金日成-金正日時代には金親子の発言が「マルスム(御言葉)」形式で奉られ、住民の忠誠心誘導など偶像化に積極的に活用されたため、党機関による緻密な準備のもとに演説文が作成されていた。
また、労働新聞が同日、金正恩が「歴史的な演説」を行ったとのみ報道し、正確な発言内容を掲載しなかった理由は、金正恩直筆の演説文が偶像化の内容として宣伝するのに適切でなかったためとの推測も可能である。これは自筆の演説文が偶像化に活用が困難な側面があったにもかかわらず、金正恩が自ら作成したものと思われる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面これについてある脱北者は「北朝鮮は住民に継続的に『首領は間違いがない』と宣伝してきた。住民が演説文が複数修正された部分を発見すれば、『元帥様が完璧ではなくどこかおかしく見える』と嘲笑することも考えられる。住民らは準備不足がうかがわれる演説文を朗読する金正恩の姿を見て、『元帥様が下の幹部を統制仕切れていないのでは』との疑念を抱かせる可能性もある。こうした可能性を感知した当局は近いうちに同写真など関連資料を削除するのでは」と話した。
一部では北朝鮮が自筆の演説文を公開したことと関連し、金正恩が苦心しながら演説文を作成したことを誇示するためのプロパガンダだとする解釈も出ている。別の脱北者は「金正恩の自筆の演説文公開は偶発的要素が強いように見られるが、人民の指導者という点を強調するための緻密な計算に基づくものである可能性もなくはない」と話した。
一方、金正恩は同日の演説で労働者に対し、党と首領を決死擁護する伝統を継承しなければならないと述べ、生産工程の現代化、後方事業の改善などと戦闘的課業を提示した。