地方工業工場の建設を名目に全国へ派遣された兵士たちが、現地住民の生活必需品を公然と奪う事件が相次いでいると韓国サンドタイムズが伝えた。
北朝鮮住民からは、「軍人を見たら無条件で避けろ」と囁かれる始末だ。
平安南道(ピョンアンナムド)平城(ピョンソン)市で、ある住民が自転車を奪われるという信じ難い出来事が起きた。今月初旬、男性が自転車に乗って通行中、数人の兵士と鉢合わせた。恐れを感じた彼は、自転車を守ろうと北朝鮮の有名な軍民歌謡「軍民アリラン」を口ずさみ、「軍隊は人民の息子だね」と歌いかけた。
しかし、兵士たちは「人民は軍隊のために自転車をタダでくれる」と皮肉たっぷりに歌い返し、力ずくで自転車を奪い去った。
男性は社会安全部(警察)に通報したが、「軍隊に関することは関与できない」と冷たく突き放され、泣き寝入りを強いられた。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
さらに衝撃的なのは、清津の水南市場で餅を売っていた女性の被害だ。6月中旬、工事現場から来た兵士2人が彼女に近づいた。1人が背後から「俺、だぁ~れだ?」と言いながら女性の目を手で塞いだ。そのわずかな隙に、もう1人の兵士が餅のカゴを抱えて全速力で逃走。女性が気づいた時には、カゴは影も形もなかったという。
事件は市場中に瞬く間に広まり、「軍人に話しかけられたら荷物に気をつけろ」という警告が飛び交っている。
背景には、軍内の過酷な環境がある。給食は粗末で、長時間の労働に兵士たちは疲れ切っている。物資不足も深刻で、現地住民からの略奪が「生きるための手段」と化しているのだ。
ある消息筋は「兵士たちが泥棒のように立ち回っている。いまでは『泥棒より軍隊のほうが怖い』という声まで上がっている」と語る。軍服を着た者に逆らえば報復が恐ろしく、住民は沈黙を余儀なくされている。
