北朝鮮全域が記録的な猛暑、韓国語でいう「爆炎(ポギョム)」に見舞われ、建設現場や農村で動員された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の女性兵士や住民が相次いで倒れ、死亡する事故が続発している。だが金正恩政権は工期遵守を最優先し、当局の警報を無視して強制労働を強行。栄養状態が悪化する住民や女性兵士が“爆炎死”の犠牲者となっている。
(参考記事:大雨に猛暑で深刻な北朝鮮のジャガイモ不作、収穫放棄地も)
7月初旬、平安南道(ピョンアンナムド)平城(ピョンソン)市の建設現場では、スコップ作業をしていた女性兵士が突然倒れ、そのまま死亡した。現場を目撃した軍人家族からは「息子を軍に送りたくない」と嘆く声が漏れる。北朝鮮は現在、「社会主義大建設突撃戦」と称する全国規模の建設事業を進めており、女性兵士や主婦までもが動員される状況だ。炎天下での長時間作業が常態化し、死亡事故は増加の一途をたどっている。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
農村も深刻だ。デイリーNKの内部情報筋によれば、7月10日には黄海南道と黄海北道で50代男性と60代女性が除草作業中に熱中症で死亡した。気温は35度を超え、農場では真昼の作業を禁止する指示が出ていたが、生活の糧を得るため個人畑に出た住民が命を落としている。咸鏡北道吉州郡でも、帽子をかぶらず4時間以上作業を続けた50代男性が熱中症で死亡した。農作業は「除草戦闘」と呼ばれ、軍事動員に近い強制作業であり、多くの作業者がめまいを訴えていた。
当局は「爆炎時の作業短縮」を口頭で指示しているが、現場ではほとんど無視されている。栄養不足の農場員に対し、幹部は「政治的覚悟で耐えろ」と圧力をかけ、死亡しても「精神力不足」と責任転嫁する。
猛暑による被害は建設現場、農村、都市部を問わず拡大している。エアコンはおろか日陰すら乏しい環境で、住民は「労働死」のリスクに直面。専門家は気候変動による極端な高温が今後も続くと予測するが、北朝鮮当局は死者数や被害状況を一切公表せず、具体的な対策も講じていない。
