情報筋によると、松新1洞のみが「市内中心部」と分類され、松新2洞や松花1・2洞の住民は「周辺区域」として排除されたという。ある住民は「寺洞区域全体が(入居)対象になると言っておきながら、蓋を開ければ中心部の住民にしか分配されなかった。我々は新しい街に住んでいても、まるで部外者のように扱われている」と嘆いた。
同じ平壌市民でも、「30号対象」と呼ばれる市内中心部の10区域の市民と、それ以外の8の区域と2つの郡の市民を意味する「410号対象」は明確に分けられている。高位幹部、上流階級である前者は食糧配給、電力供給など様々な面で優遇されている反面、後者は差別的な扱いを受けている。松花通りでは、松新1洞のみが「30号対象」とされているようだ。
(参考記事:北朝鮮に存在する「上級市民」と「下級市民」隔てる高い壁)当局は、30号対象と410号対象を同じ地区には住まわせられないとして、この地域に元から住んでいた住民を、入居対象から除外したという。
事実上、平壌中心部の住民にのみ新築マンションを割り当て、郊外の住民を切り捨てた形だ。北朝鮮の体制を研究する専門家は、「いわゆる『成分』と呼ばれる身分制度が、いまだに住宅分配にまで影響している。マンション1世帯すら、体制への忠誠度や血統によって配分されるのが北朝鮮の現実だ」と指摘する。
(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」)金正恩政権はこれまでにも「未来科学者通り」「黎明通り」などの住宅開発を推進してきた。今回の松花通りも、金日成主席生誕110周年を記念する「業績用プロジェクト」として位置付けられている。しかし、現場で起きている住宅差別は、むしろ住民間の分断と不満を増幅させている。
