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韓国の裁判所は8日、バスを奪って北朝鮮に戻ろうとした30代の脱北者に対して、執行猶予付きの実刑判決を下したと、韓国の各メディアが報じている。

脱北者のA氏は両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)出身で、脱北して2011年に韓国にやってきた。しかし、彼を待ち構えていたのは苦しい現実だった。

彼は定職につくことができず、日雇い労働で生計を立てていたが、2018年に足を負傷してから働けなくなった。深刻な貧困に陥った彼は、基礎生活保障(生活保護)を受け、考試院(コシウォン)と呼ばれる、非常に狭い部屋で暮らしていた。人との交流が断ち切られ、北に残してきた家族への思いは募る一方だった。そして逃げ出してきた北朝鮮に戻ることを考え始めた。

彼は裁判で、「北朝鮮では1日以上何も食べられなかったことはなかったが、韓国では1週間も何も食べられなかった」「金がなければ死ぬ国だと思った」と述べた。

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昨年9月、住んでいたソウル市内のコシウォンの家主から家賃未納で月末までの退去通告を受けた彼は、緊急生活費支援について相談しに、住民センター(区役所の下にある行政機関)を訪れた。そこで彼は相談員にこんな胸の内を打ち明けていた。

「車両を奪って板門店を通って北朝鮮に行けばメディアに取り上げられ、北で韓国の体制を批判すれば自分を許してくれて、再び北朝鮮で暮らせるはずだ」

そして、その翌日の昨年10月1日未明、ソウル郊外の坡州(パジュ)市内の車庫から、鍵が付いたままのマウルバス(コミュニティバス)を盗んで北に向けて走り出した。民間人の立ち入りが許されない軍事統制区域まで突進し、北朝鮮方面の検問所に向かって約900m走ったが、韓国軍に阻止された。

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裁判所は「北朝鮮を称賛したり、同調しようとする意図は見られない」とし、「脱北者が韓国社会で直面する現実を示した事例だ」と判断した。そして「統一を準備する社会が必ず解決すべき課題だ」と付け加えた。

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もし北朝鮮への密入国が成功していたとしても、生きていられたかはわからない。

同様の事例は他にもある。

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2018年8月には、30代の脱北男性のB氏が、4つの検問所を突破して、北朝鮮に戻ろうとして逮捕され、実刑判決を受けた。B氏はこの前にも、一度北朝鮮への密入国に成功したが、板門店を通じて韓国に送還されたことがある。

また、2021年9月には60代の脱北女性Cさんが、現金と非常食を持って橋を渡り車に乗り込み、北朝鮮に戻ろうとして、検問所で摘発された。

警察関係者は聯合ニュースの取材に、脱北者は生活苦とホームシックから北朝鮮に戻ることを考えがちだとして、次のように述べた。

「脱北の過程で命を落とす危機を何度も乗り越えたせいか、軍人や軍事施設に対する恐怖心が他の人より少ないことが多い」
「決心さえすればいくらでも北朝鮮に戻れると思い込んでいる人も多い」