北朝鮮はかつて、アフリカ各国に医師を派遣していた。外貨稼ぎが目的だが、エビデンスが確かでない医療行為を患者に施すなど、社会問題へと発展した。
東アフリカのタンザニアでは2016年、ひどい咳に悩まされていた19歳の青年が、北朝鮮系クリニックでお灸とカッピング(吸い玉)療法を施され、正体不明の北朝鮮製の薬を処方された。しかし、病状は一向によくならず別の病院に行ったところ、結核と診断されたという。
現地メディアが大きく取り上げ、社会問題へと発展し、クリニックは閉鎖を余儀なくされたが、タンザニア当局は、医師不足の解消のために、北朝鮮の医師をさらに受け入れる姿勢を示していた。
そんな中、国連安全保障委員会は、加盟国に自国内の北朝鮮労働者を2019年末までに送り返すことを義務付けた対北朝鮮決議2397号を採択した。その後、新型コロナウイルスのパンデミックを受けて北朝鮮が鎖国状態となったため、「医師派遣プロジェクト」はペンディング状態となっていた。
(参考記事:「北朝鮮インチキ病院で電気ショック」を受けたアフリカの高校生の苦しみ)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面昨年になって、北朝鮮がモザンビークやナイジェリアに200人の医師を派遣すると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えていたが、北朝鮮の医師がまたもや問題を引き起こしている。場所はコンゴ民主共和国(旧ザイール)だ。
現地メディアの「Changement7」は、首都のキンシャサ市内に5か所以上の北朝鮮系クリニックが開業し、高麗医学(朝鮮の漢方医療)に基づいた治療を行っていると報じながら、様々な問題点を指摘している。まずは言葉の壁だ。
診察に当たる医師は、コンゴの公用語のフランス語も、英語も理解せず、患者が自身の症状を訴えても、本当に通じているのか確信が持てないという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また製造会社や成分、有効期限などの記載がなく、空のペットボトルに詰められた茶色い液体を薬として処方している。それも冷蔵庫に入れられず、常温で保存されている。
治療費はコンゴフランではなく、米ドルで決められており、1日あたり10ドル(約1520円)だ。
(参考記事:「麻酔なしで手術、妊婦見殺し」の北朝鮮がメディカル・ツーリズム)クリニックのひとつを訪問したコンゴ人の医師は、のインタビューに次のように答えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「キンシャサにある北朝鮮のクリニックを訪れ、北朝鮮の医師たちがフランス語もリンガラ語も英語も話せず、医療機器もなく、危険でラベルも検証もされていない液体を、極めて不衛生な環境で医薬品として使用していることがわかりました」
そして、速やかな閉鎖を求めた。
「医師会が定めたルールに従わないものは、この国で開業すべきではない。それは医療ではなく、ヤブ医者だ。ヤブ医者」
RFAの現地の情報筋によると、北朝鮮の医師たちは2018年ごろからコンゴでの活動を開始しし、その数は現在10人に達する。