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北朝鮮は「銀河3号」の長距離ミサイル発射実験を成功させた。

北朝鮮が米国西部に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発しているとの情報は、ずいぶん前から周知の事実だった。今更驚くことでもない。私たちが最近まですっかり忘れていただけだ。

2004年7月頃のことである。当時、黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ)北朝鮮民主化委員長はハンナラ党のクォン・ヨンセ議員に招待され、国会で「北朝鮮問題解決方案」をテーマに講演を行った。

黄氏の持論は次の通りだ。北朝鮮の核と金正日政権は運命共同体であるため、北朝鮮の核兵器だけに焦点を当てては北朝鮮問題は解決できず、北朝鮮の首領絶対主義体制を崩壊させてこそ北朝鮮の核兵器も解決できるという。黄氏は「北朝鮮の核兵器と闘うことは、火と闘うのではなく、火の影と闘うようなもの」と例えた。

その日の講演で黄氏は、北朝鮮が米国西部に到達可能なICBMを開発していると証言した。が、それ以上は何も語らなかった。政府もマスコミも黄氏の証言が持つ、北朝鮮核戦略の重さを感じることはできなかった。何故だろうか。当時の国内状況がそうさせた。

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当時、盧武鉉政権は金正日の核戦略を「対米交渉用」程度に認識した。米国との交渉力を高めるために金正日が核開発をしているという主張だった。(未だに同様の主張をする一部の「専門家」がいる。)そのため、盧武鉉大統領は米国に行き「北朝鮮の核開発には一理ある」とまで発言した。対外的には無条件に「北朝鮮の核否認」の原則を守るべき韓国の現職大統領がこんな発言をしたとは、盧武鉉政権が金正日の核戦略をどの程度理解していたかが分かる。

そのような状況の中で黄氏の「北朝鮮、米西部到達ICBM開発」証言は、事実がそのまま受け止められず、まるで保守-進歩間の「対北政策路線闘争」のように映し出された。「米西部到達ICBM開発中」という証言は、韓国の立場では「極めて重要な情報」である。保守-進歩という分類とは本質的に何の関係もない。

それにもかかわらず、北朝鮮の長距離ミサイル開発についての「実体的証言」が、まるで「対北強硬発言」扱いされていた時期だった。(未だに北朝鮮の軍事挑発が体制生存戦略のためではなく、韓国の「対北強攻策」のためだと主張する「専門家」がいる!)。

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北朝鮮問題については「真実」が真実として受け止められない場合が非常に多い。「事実」を述べているだけなのに、その言葉を聞く人は頭の中で保守-進歩に分かれて聞いている。そのため事実をありのままに伝える黄長ヨプ氏は「極右」だと妄言した「北朝鮮専門家」もいた。類似の事例は数多く存在する。「極右」または「極左」を充足するためにはどのような条件が必要なのかも知らないまま、むやみにそのような発言が飛び交うのが私たちの現実である。

TV討論に出演した統合進歩党の李正姫(イ・ジョンヒ)候補の発言を通して、真実がいかに歪曲され、彼女の脳細胞に化石の如く強固に登録されているのかが分かったと思う。「KAL機爆破犯の金賢姫は偽者」と主張する彼女の夫や、統合進歩党の李正姫候補を見れば、徹底した自己確信又は洗脳化(brainwashing)なくして、あのように一貫して一寸の過ちもなく主張するのは容易ではないだろう。

そのため筆者は北朝鮮問題は「ありのままの真実」を国民に知らせることが何よりも重要だと考える。その次に国民とともに問題解決の方法を探していくべきだ。たとえ時間はかかっても、他に効果的な方法がない。

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だとしたら、当時の黄長ヨプ氏の証言の内容の核心は何だったのか。それは2つある。

まず、1996年晩夏~初秋の頃、北朝鮮の中央党(労働党中央委員会)秘書の会合に全秉浩( チョン・ビョンホ)軍需工業担当秘書が久々に姿を現した。そこで黄長ヨプ国際秘書が「どこかに行ってきたのか?」と尋ねると全秘書は次のように話したという。「黄秘書はもう外国に行く時、プルトニウムを仕入れる苦労をしなくてもよい。今回パキスタンに行って我々(北朝鮮)はパキスタンにミサイル技術を提供し、パキスタンは我々にウラニウム原心分離技術を提供する協定を結んできた」

そして全秉浩秘書は「我々が開発中の大陸間弾道ミサイルが米国西部まで到達することはする。しかし当初の目標である地点に正確に落下するかは不明だ。LAを狙って発射すれば、そこを外れることはあっても米国西部まで行くことは行く」と話した。

全秉浩秘書の話を総合すると、1)北朝鮮は1994年に米国とジュネーブ合意を締結後、1996年から濃縮ウラン核開発を開始。この事実が発覚し2002年10月、ジェームズ・ケリー米国務省次官補が訪朝して北朝鮮の自認を引き出したことで、第2次北朝鮮核危機が触発した事実が確認できる。2)今回北朝鮮が成功させた銀河3号ICBM級ミサイル開発も、1996年の時点ですでに相当な部分が進行していたことが分かる。

黄長ヨプ氏は翌年の1997年に亡命し、正確な時期は分からないが以上の事実を韓国政府に知らせたことは言うまでもない。筆者はこの事実を2000年頃、黄氏から聞き、2004年1月、黄氏の「北朝鮮問題解決方案」というタイトルの原稿を整理しながら、黄氏と研究所の同僚2名とともに金正日の核戦略に関して討論した。この事実が公開されたのは、同年7月頃、黄氏が国会講演会を行った時である。

1996年といえば、すでに16年前である。16年も前から北朝鮮は米国西部地域到達を目標にICBM級ミサイル開発を進めていたことになる。よって今回、銀河3号が成功したという事実に対し、新聞1面を大きく飾るなどと、騒々しく対応する理由はどこにもない。

私たちが本当に驚くべき点は、北朝鮮問題に関する真実を信じない一部の政治家と一流専門家であると錯覚する彼らの「無知」である。銀河3号の成功が驚きに値するのではなく、私たち内部にある「無知」に驚かなければならない。

黄長ヨプ氏は2010年10月、逝去した。筆者が1999年から2010年まで黄氏から口癖のように聞いてきた話が「ここの(韓国)政府が我々の話しを信じないことには始まらない!」であった。そして「半人前で無知な専門家のために頭が痛い」とも言っていた。「北朝鮮にいる時はただ1人の『不世出の天才』(金正日氏)のために頭が痛かったが、ここ(韓国)は天才が多すぎて頭が痛い」と話した。「青二才な人物が専門家だと騒ぎ立てているし、ある大学院の講義に行ったら教授たる者が私に向かって『極右』と言った」と苦笑いを浮かべた。

そんな「青二才」や自称専門家が金大中-盧武鉉政権時代、韓国の北朝鮮政策に意見した。今の李明博政権でも一部そのような集団が存在し、またあちこちの大統領選キャンプ内にもいる。

黄氏は1997年の亡命後、「北朝鮮はすでにプルトニウム核兵器を持っており、さらに製造しようとしている」と証言した。そして大陸間長距離ミサイル開発についても言及した。しかし「専門家」らはまともに信じようとしなかった。北朝鮮がそんな能力を持っているはずはないとした。北朝鮮の対南戦術に常に不意打ちを食らいつつも、北朝鮮をありのままに見ようとせず軽視していた。

月を指差せば月を見るべきものを、指差しているのが月なのか星なのかも分からない「専門家」が存在し、また一部は指差した月を見ずに、その指が短いだの長いだの、爪に垢がたまっているなどと言って焦点が合わない人物もいる。そのくせ人前に出て演説する人は多い。自分が信じたい情報だけ信じることが癖になっている人は、国家にとって役に立つのではなく、結果的には危害を加える人物となる。このような社会の雰囲気の中で、どうして韓国が発展できるだろうか。

核戦略を含んだ北朝鮮政権の対内外戦略を正確に知りたければ、黄長ヨプ氏の著書を読めばいい。北朝鮮問題解決の答えが黄氏の本に書いてある。図書出版時代精神、月間朝鮮社、趙甲済ドットコム、ハヌル出版社などから出ている黄長ヨプ氏の著書が至る所にある。

北朝鮮の核戦略に関する情報がないためではなく、本を読まないことが問題である。全ての問題の根源は私たち自身の中にあるのに、自分が無知であることに気付かず、情報がないことに責任を押し付けている。(時代精神、趙甲済ドットコムと言うと本の質には見向きもせず、「保守出版社だね」とまず思う情けない人間がいる。社会の歴史がどのように変化・発展しているのかすら知らない、このような人物らが自称「進歩」と称しているのが韓国の現実である。)

銀河3号ICBM実験ミサイルは金正恩が打ち上げたが、「金正日の遺訓ミサイル」であり、金正日の核戦略によって発射された。北朝鮮は2010年11月、米国の核専門家であるジークフリート・ヘッカー氏を招待して濃縮ウラン核施設を見学させ、核量産体制への突入を宣言した。今回の銀河3号の成功により、金正日の核戦略第2段階が事実上終了した。

最後の3段階はICBMミサイルの大気圏再進入と核弾頭軽量化であろう。核弾頭の軽量化は今後3回目の核実験で高濃縮ウラン弾を使用することで「軽量化成功」を知らせる方法もあると思われる。

北朝鮮の大気圏再進入技術が現在どの段階まで達しているのかは分からない。すでに大気圏再進入技術を保有しているにもかかわらず、今回は実験を先送りしたのか、-(再進入を試みたために搭載物が燃焼したとしても、その軌道を見ればどこに落下したのか追跡できる)-、もしくはまだ技術を保有していないのかは、はっきりとしない。専門家によれば、同技術は基本的に数学の発展が必要だという。

筆者が黄長ヨプ氏から聞いた話しでは、金日成総合大学のソ・サングク教授が核とミサイル分野に数学理論を提供してきたとされる。モスクワ総合大学数学部出身の彼は、数学の天才として知られている。ソ・サングクは1980年代、ハンガリーで開かれた共産圏国防科学者大会に出場し、他の国の参加者は実験を通して新しい理論と技術を証明したが、彼はチョークで黒板一面を埋め尽くしながら数学を以って証明する方法を披露し、他の参加者を驚かせたといわれている。彼は金日成大学哲学部の教授を対象に数学(量と質)を講義したこともあるという。

これらのことから、北朝鮮は国家レベルで核とミサイルを開発してきたことが読み取れ、私たちが予想するよりも多少発展した技術を持っていると仮定する必要がある。まして安保分野は悲観的状況を想定して備えることが原則である。

金正日の核戦略のゴールはどこにあるのか。それは明確である。米国と朝鮮半島の平和協定を結び、米韓軍事同盟を破棄させ、非対称対南軍事的優位を維持しつつ、韓国から経済支援を安定的に受け-こうなれば私たちは確実に「核の人質」となる-韓国内の北朝鮮シンパ勢力と連合し、最終的には北朝鮮体制への統一を追及することである。これが現実的に可能であろうとなかろうと、その方向に向かおうとしている。それは北朝鮮政権の存在理由でもある。

問題は東アジアで領土紛争が本格化し、その最上層部には米中間の対外戦略が葛藤と対立を見せているため、北朝鮮の先軍路線の戦略的空間がさらに拡大してしまったことである。一言で先軍主義体制生存戦略がはびこるのに国際的環境が好転したといえる。今回の銀河3号の発射は、朝鮮半島と東アジア情勢が紛争局面に突入する信号弾となった側面もある。

北朝鮮はこの点を十分認識しているであろう。朝鮮半島の軍事的緊張を高めつつ、米中間の葛藤を活用するという生存戦略を拡大していくだろう。様子を見る必要はあるが、中国が北朝鮮の核とミサイル問題の対処方法において、日米韓が望む方向へとうまくサポートしてくれる見込みはそれ程ない。結局、中長期的には北朝鮮の先軍路線と日本の右翼の活動範囲が拡大していく様相が見られるであろう。

では私たちはどうすればいいのか。

北朝鮮の核戦略は今に始まったことではない。よって特別な妙法があるわけでもない。原則どおり進むのみである。北朝鮮が善良になればパンを与え、悪さをすれば国際社会と協力して懲罰する。ミサイルを発射すれば懲罰するのは当然のことである。

注意すべきは、政府と民間は死んだ金正日の核戦略を正確に理解していなければならない。北朝鮮の核は交渉用だからたいしたことないという妄言はもう出て来てはならない。

そして何よりも国民と政府が北朝鮮問題の解決に向けた一致した目標を共有すべきである。北朝鮮の核問題は、北朝鮮の全体主義首領独裁体制が崩壊しない限り存在し続ける。

結局、対北統一政策の最終目標は金王朝の平和的交代→改革開放民主政権樹立→北の開放政府+韓国+国際社会(米中日露)による北朝鮮の近代化推進→自由民主主義南北統一へと進む戦略を実行に移すことである。これが朝鮮半島に恒久的な平和を保障し、南北8千万の人間が安全で幸せな生活を送れる普遍的な道である。

その道へと進むためには、このコラムでも度々言及してきたが、総合的で立体的な対北戦略が必要である。圧縮して言えば、北朝鮮の開放化-市場化-情報化を促進する介入(engagement)と拡張(enlargement)戦略である。この戦略を遂行する方式としては、政府当局(A)、民間交流(B)及び複数のトラック(track)を稼動させなければならない。

そのためには対北統一政策の「コントロールタワー」が必ず必要だ。また体北統一戦略遂行において、何よりも優先的に私たち内部の社会統合が重要である。

過去のこのコラムでも触れたが、南北関係は朝鮮戦争の時から北朝鮮が挑発をすると韓国が防御する状態、つまり北朝鮮は攻勢、韓国は守勢だった。北朝鮮が朝鮮半島の南側に対南戦略の前線(front line)を移動させ、北朝鮮が挑発すると韓国はまず攻撃を受け、その後反撃するといううフレームだった。これからはこの誤った国「を変えていかなければならない。

この国「を変えるための核心戦略は、北朝鮮の主権を金王朝ではなく2400万の北朝鮮住民のものとすることであり、それは対北戦略の前線を北朝鮮内部に移すことである。

若い金正恩は父親が死ぬ前に作っておいた核戦略に沿って銀河3号を成功させ、見事にその第一歩を踏み出した。「金正日の核戦略ギャンブル」を金正恩が成功させるか否かは予想不可能である。

問題は私たちに与えられた時間はあまりないということである。急速な高齢社会への突入により、成長動力は衰退しつつある。金正恩は父親の核戦略をそのまま踏襲するだろう。結局残されたのは南北間の時間との闘いである。

よっていくら長くても5年以内に北朝鮮問題解決のスタートを何としても切らなければならない。それが私たちの10代~30代の未来に希望を与え、何よりも韓国が生き残る道、南北8千万の住民が生き残る道となる。