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北朝鮮第2の都市、咸興(ハムン)は、国家科学院咸興分院、咸興化学大学などの理工系教育機関、興南製薬工場などの工場を擁する、化学産業の集積地帯だ。

全国から優秀な人材が集まるが、そのひとつの咸興薬科大学の教授が先月中旬に逮捕された。なんと、この教授は教え子までを犯罪行為に巻き込んでいた。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

逮捕されたのは咸興薬科大学の教授を務める50代男性のキム容疑者(仮名)だ。先月中旬に咸興市安全部(警察署)監察課によりキャンパス内で逮捕され、取り調べを受けている。咸興薬科大学は地方大学ではなく、一流大学を意味する中央大学であるため、捜査には首都・平壌の中央検察所が当たっているという。

事件の発端は昨年11月まで遡る。

咸興から南に約100キロ離れた港町、元山(ウォンサン)でピンドゥ(覚せい剤)の密売組織が摘発された。一味の取り調べの過程で、キム教授の名前が浮上した。そのラインを辿っていくと、今度は彼の教え子が浮上した。

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「卒業生の一部が、教授から頼まれて運び屋をやっていた」(情報筋)

それも一人二人ではない上に、他の教職員の関与も疑われている。つまり、キャンパス内に大規模な覚せい剤密造組織が存在し、それを全国に運搬する運び屋のネットワークまでできていたということだ。犯罪に加担するつもりはなかったであろう学生、卒業生、教職員も、おそらく学内でそれなりの地位にあるキム教授からの頼みとあって、断りきれなかったのだろう。

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現在、大学行政は完全にストップした状態で、卒業を控えた学生たちは不安がっている。

「(関与した学生は)退学はもちろん、処罰も免れそうにないとの噂が立ち、学生たちは緊張して事態の推移を見守っている」(情報筋)

この話を伝え聞いた咸興市民は、特に驚いてはいない。

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「咸興では、市場で白菜を売っている人ですら覚せい剤の密造に関わっているほどなので、大学教授が覚せい剤を売っていたところで、特に驚きはない。ただ、罪のない学生が処罰されるかもしれないのは問題だ」(情報筋)

そもそも、北朝鮮の覚せい剤問題は、自ら蒔いた種だ。

今回のように、国外向けのはずだったものが、国内に浸透して被害をもたらした、「ミイラ取りがミイラになる」的な事象としては、覚せい剤の乱用も挙げられる。

北朝鮮では1970年代から、覚せい剤の生産が始まっていたが、本格化したのは故金正日総書記が1992年に出した命令がきっかけだ。「白桔梗(ペクトラジ)事業」と命名し、咸興の興南(フンナム)工場などで覚せい剤を密造し、中国や日本に密輸して外貨を稼ぎ出していた。

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ところが、その後に北朝鮮を襲った経済危機「苦難の行軍」のときに、研究者たちは食糧配給を受け取れなくなり、生きていくために覚せい剤の密造に関わるようになった。だが、覚せい剤の蔓延に頭を痛めていた中国政府は、咸興の工場が製造元であることを知り、北朝鮮に工場を閉鎖するよう圧力をかけた。

工場や実験施設が一部閉鎖されたが、既に製造ノウハウは流出した後で、様々な研究者が密造に手を染め、北朝鮮の国内市場にも出回るようになったのだ。