北朝鮮に強制送還された脱北女性が処刑されたとの疑惑が浮上した。
国連で北朝鮮の人権問題を担当するエリザベス・サルモン特別報告官ら7人の人権専門家は、中国から強制送還された脱北女性2人が処刑されたとの情報を入手したとして、北朝鮮に説明を求めた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
サルモン氏が北朝鮮当局に書簡を送ったのは昨年11月6日のことで、国連人権理事会で、現代的形態の奴隷制に関する特別報告者を務める小保方智也氏ら、人権専門家合わせて7人が署名した。
その内容とは、北朝鮮当局が中国から強制送還された脱北女性2人を死刑、9人を終身刑にしたとして、関連情報の提供と説明を求める、というものだ。
北朝鮮当局は昨年8月31日、咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)で公開裁判を開き、中国にいた脱北者を韓国に売り飛ばし、風俗店で売春をさせ、「人民の尊厳を冒涜した」容疑で、43歳と39歳の女性2人に死刑判決を下した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面この2人は、中国が2023年10月に強制送還した数百人の脱北者の一部で、判決当日に処刑されたと伝えられている。
(参考記事:中国、勾留中の脱北者2600人を段階的に強制送還)残り9人の女性に対しては、中国での人身売買に関与したとして終身刑を宣告され、その後、行方がわからなくなっている。
これに対して、国連の人権専門家7人は、死刑・終身刑判決を受けた11人の強制送還は「強制送還の禁止の原則」を定めたノン・ルフールマン原則に違反し、彼女らが公正な裁判と適正な手続きを保障されず、過度の処罰を受けたと指摘した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国際法は死刑宣告について、「最も深刻な犯罪」に限定されなければならないと規定しているとし、北朝鮮は死刑を受けた女性2人の容疑がこのような基準を満たしていないにもかかわらず、控訴する権利もないまま即座に処刑されたと指摘した。
(参考記事:内臓がはみ出し…北朝鮮「女子アナ」ショック死の衝撃場面)さらに、北朝鮮国民には出身国からの出国を含め、移動の権利を享受する権利があり、権利の行使を犯罪化してはならないと強調した。
7人はまた、中国に脱北した女性たちが人身売買と性売買に非常に脆弱な存在であるとの懸念を表明してきたとし、書簡で言及された11人も人身売買の被害者である可能性が高いとした。そして、北朝鮮当局に人身売買の被害者として彼女らを保護するよう求めた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面さらに、終身刑を宣告された9人の脱北女性の行方がわからなくなっていることについて、専門家らは懸念を表明し、北朝鮮の管理所(政治犯収容所)において、女性たちが拷問を受け、残酷で非人道的で屈辱的な環境に置かれていることはよく知られている事実だと指摘した。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
これについて、韓国の脱北者団体「キョレオル統一連帯」のチャン・セユル代表は、RFAとの電話インタビューで、コロナ以降、中国から強制送還された脱北者が処刑されたとの情報は、今回の書簡に明記された事例が初めてだと述べた。
また、韓国のNGO・脱北者同志会の徐宰平(ソ・ジェピョン)会長は、中国国内にいた脱北者の韓国行きを手助けした容疑が死刑につながったとして、北朝鮮は最近、完全敵対国と定めた韓国と関連するすべてのことに、過度な処罰を行っていると述べた。