北朝鮮で先日、複合ショッピングモール「ヘマジ食堂」がオープンしたが、同様の大型店舗を地方にも建設するよう金正恩が指示したという。「人民に親しい金正恩」というイメージ作りの一環と見られるが、地方住民への特別な配慮をアピールするための措置とも解釈される。
金正恩の指示によって、新義州など主要な地方都市では店舗建設のための投資誘致に躍起になっているとのことだ。当局からの財政支援は見込めず、中国からの投資がない限り建設も維持も困難な状況である。
新義州の消息筋は20日、デイリーNKに「先月末、中央党から元帥様(金正恩氏)の指示として『新義州に大型店舗を建てるように』との課題が命じられた。店舗を建築する余裕などない党委員会は、直ちに貿易会社に依頼して対策を取るよう指示した」と伝えてきた。
また「新義州だけでなく、他地域も状況は同じだ。当局も資金集めが最優先課題であることは分かっているため、投資誘致に成功した企業には、自主的経営権を保障する計画を立てている」と付け加えた。
中国丹東で中朝貿易を営むA氏も同じような事実を認めた。A氏によると「ちょっと前から大切なな話があると北から頻繁に電話があった。面談したところ、『北朝鮮に大型店舗を建設する事業を一緒にしないか』と投資をもちかけられた」とのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面A氏によれば、中国に派遣された北朝鮮の貿易業者は、建設費用や丹東で大型店舗がどのように外資を誘致したかについて集中調査を実施したという。現在、丹東市の大型店舗はイギリス某企業の投資によるTESCO(中国名:乐购)と、米国の最大大手ディスカウント・スーパーであるウォールマート(Wal-mart)がある。
貿易業者は北朝鮮の店舗で商品を販売できる権限を与えると条件で、中国企業に投資をもちかけているとA氏は言う。北朝鮮の貿易商は、『投資額に応じて商品を陳列できる権限』などの条件を提案する。さらに、朝鮮労働党中央の決定事項であり、今回は問題なく事業展開できると投資家達を安心させているという。
しかし、果たして投資がスムーズに誘致できるのかということについてA氏は疑問視する。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「今年の2月、北当局は北朝鮮初の平壌の大型店舗『光復地区商業中心』を地方で建設できるのか打診せよと指示したが、結局は事業自体が中止になった。投資家からの信頼は薄く、実現はするかどうかは疑問 」(A氏)
また、地方住民が大型店舗を利用するかという点についても懐疑的な意見もある。平壌光復地区の場合、オープン時の売り文句「市場よりも安く良質の製品を人民に提供する」が守れていない。多くの商品は高価で富裕層にしか利用されていない現状だ。
▲ヘマジ食堂= 平壌の倉田通りに位置する複合ショッピングセンター。食堂内にはスーパーや肉類、水産物を扱う店舗、コーヒー専門店などがある。金正恩は同施設の名称を自ら考えるほど、特別に関心を見せている。