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ワイロさえ支払えば問題なかったはずが、思いも寄らないところから問題が噴出した。

北朝鮮政府は、国民のヘアスタイルにも口を出す面倒くさい存在だ。国営の理髪店、美容院では、政府推奨の男性10種類、女性18種類以外のヘタスタイルは、注文を受け付けない。

流行に敏感な若者たちは、お仕着せのヘアスタイルを嫌い、民間人が営む美容院に通う。そんな美容室の経営者が、問題にならないように「対策」を行っていたにもかかわらず、摘発され懲役刑の判決を受けたという。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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摘発された美容師のキムさんは、10年前から恵山(ヘサン)市内の自宅を改造して美容室を営み、料金は他より高めだが、「外国のヘアスタイルにしてくれる」ことで、若者の人気を集めていた。

2022年から個人経営の美容室に対する大々的な取り締まりが始まり、キムさんも安全部(警察署)に3回呼び出されたが、いずれもワイロやコネでもみ消して問題にはならなかった。

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政治犯を除けば多くがカネとコネでもみ消せる北朝鮮だが、それが通じないときもある。

事が起きたのは今月2日のことだ。キムさんの店でパーマを当ててもらった若い女性が、路上で私服の安全員に携帯電話の検査を受けた。ターゲットはK-POPのPVや韓国ドラマ、映画などのファイルで、このような検査は日常的だ。安全員は携帯電話を徹底的に調べたが、問題になるようなものは何も見つけられなかった。

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ここでおとなしく引き下がればメンツが立たないと思ったのだろうか。安全員は、彼女のヘアスタイルにいちゃもんをつけ始めた。茶髪にしていて、伸ばした髪を後ろで結わえていないのは、社会主義生活様式に合わない異色的な(奇妙な)ヘアスタイルだと言い出したのだ。

それに対して彼女は、「カラーリングは絶対にしていない、パーマで色が変わっただけだ」と反論した。安全員は、その態度が反抗的だとして、彼女を連れてキムさんの美容室に向かった。

店に踏み込んだ安全員の目に飛び込んできたのは、西洋人がモデルになった様々なヘアカタログだった。キムさんは、ヘアカタログを片付ける余裕もなかったようだ。

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これが、反動思想文化排撃法の次の条項に違反する行為とみなされた。

第30条(異色的な思想文化伝播罪)
社会主義思想文化とわが国の生活様式に反する他国の映画や録画物、編集物、図書、歌、絵、写真のようなものを見たり聞いたり、保管した者、または非合法的に他国の歌、絵、写真、図案、衣装のようなものを流入、流布した者は、労働鍛錬刑に処す。

(参考記事:北朝鮮「韓流コンテンツを流通させたら死刑」反動思想文化排撃法の全文公開

結局、キムさんは軽犯罪を犯した人が服役する刑務所の労働鍛錬隊で、6カ月もの間、強制労働に従事させられることとなった。

情報筋は、「取り締まりがあまりにも頻繁に行われているので、一人が捕まれば芋づる式に複数人が捕まることがしばしば起きる」と、他にも逮捕者が出る可能性があることを示唆した上で、「若い女性がうまく取り締まりを免れるか、自分だけの問題だと言ってやり過ごしていれば、こんなことにはならなかったはず」だと残念がった。

キムさんの出所後の意向はわからないが、皆が苦しい生活を強いられている中、確実に儲かる美容師の仕事を辞めることはないだろう。

当該の安全員は、もしかすると上司から「金払いのいい上客を捕まえるとは何事か」と叱責を受けているかもしれない。結局、こんな取り締まりで得をする者など誰一人としていないのだ。