人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮国営の朝鮮中央通信や、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、今月3日午後10時過ぎに発令された韓国の非常警戒令と解除、その後の尹錫悦大統領の弾劾を求める大規模な集会について、11日になってようやく報じた。

しかし、韓国と至近距離にある黄海南道(ファンヘナムド)の海州(ヘジュ)では事態の発生翌日には、韓国政治に関する政治講演会が行われていたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

(参考記事:「わが国は毎日が戒厳令」韓国情勢を知った北朝鮮国民の驚きと嘆き

海州教員大学では4日、学生たちを集めて韓国の政治情勢に関する講演会が開かれた。その場では、「尹大統領に反対するデモが連日開かれている」「政権の支持率が下落している」などと言った内容が話された。

もっとも、これは非常戒厳宣布後の動きに関するものではなく、それ以前に出ていた現象を語ったものだった可能性がある。

ちなみに、海州市内中心部から韓国領の白翎島(ペンニョンド)までは直線距離で40キロしかなく、海州港のあるしない南部の龍塘浦(リョンダンポ)は、北緯38度線以南にあり、朝鮮戦争までは韓国領だった。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

この地域では、韓国のテレビが直接受信できるため、視聴している人が少なからず存在すると言われている。もちろんバレれば重罰に処される。

(参考記事:「見てはいけない」ボロボロにされた女子大生に北朝鮮国民も衝撃

講演の主催者は、学生の中に韓国のテレビを密かに見ている者がいるということを前提にして話をしたのかもしれない。だが、それが思わぬハレーションを生んでいる。

学生たちは講演会が終わった後、三々五々集まり、こんな話を交わしたという。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

「支持率とは何か」
「大統領の支持率はどうやってわかるのか」
「畏れ多くも首領様(金正恩総書記)の支持率はどのように評価するのか」

韓国の世論調査会社のギャロップとリアルメーターは、世論調査で全国の18歳以上の1000人を対象に大統領、政党支持率の調査を、1987年の民主化以降今に至るまで毎週行っている。

ちなみにリアルメーターが9日に発表した調査で、尹大統領の支持率は前週の25.0%より大幅に下がった17.3%だった。また、尹大統領の今後について「即時下野または弾劾」がもっと多く74.8%、任期を短縮して職を全うさせる「秩序ある退陣」を挙げた人には16.2%に過ぎなかった。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

さらに「戒厳令に対するトラウマがある」と答えた人は66.2%、「その苦痛が未だに続いている」と答えた人は40.0%に達した。

1979年10月の釜馬民主化運動を機に釜山と慶尚南道に戒厳令が発令され、その最中におきた朴正煕大統領暗殺(10.26)で範囲が済州道を除く全国に拡大。そして翌年5月には全土に適用され、その直後に光州民主化運動と虐殺が起きた。この流れにおいて、心に深い傷を負った人が少なからず存在していることが、今回の世論調査で明らかになった。

「支持率」という聞いたことのない言葉に関心を持った北朝鮮の学生たちだったが、その中に情報員(スパイ)が混じっていて、このことを社会主義愛国青年同盟(以下、青年同盟)に通報した。その後、この件は朝鮮労働党海州教員大学委員会に報告され、何人かの学生が保衛部(秘密警察)に逮捕された。

(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

取り調べで学生たちは、「講演会の趣旨に反したり、不純な意図を持って発言したのではなく、傀儡韓国の大統領支持率についての単純な好奇心だった」などと弁明したが、保衛員は聞き入れず、「流言飛語(デマ)拡散の可能性あり」とした。

そして、「不要な発言をしたことを後悔し、過ちを反省する」、「二度とあのようなことはしない、正しい姿勢で講演に臨みたい」という内容の反省文を書かせた。

一方、大学側は学生に対して、「一切の政治的発言を禁じる」という布告を出した。

学生からは異論が噴出している。

「講演者が講演で傀儡韓国の大統領の支持率やら何やらと言って、自分たちが理解できない発言をしたことが間違っていたのではないか」
「講演の内容をベースにして討論して何が悪い」

ある学生は、大学当局の不甲斐なさに怒りをあらわにした。

「この件は責め立てたり、釈明を強いられたりするレベルのものではないのに、大学当局は恐怖に怯え、学生の口封じをしている」

なお、北朝鮮に世論調査は存在しないが、当局は国民世論に非常に敏感であると言われている。金正恩氏に対する支持は、市場への介入を行っていなかった2010年代には現在より高く、市場を抑え込みにかかり国民の生活苦に拍車がかかっている近年では下落しているだろう。