今年7月末の水害で甚大な被害を受けた北朝鮮の鴨緑江流域では、家を失った被災者が入居する住宅の建設が急ピッチで進められている。金正恩総書記は、12月までの完成を厳命した。デイリーNK取材班は、その建設現場の写真の入手に成功した。
(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故)
そのうちの1枚を見ると、地面に積み上げられた土管のうち、一部が破損している。半分ほど粉々に砕けているものもある。
平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、これはマンションの下水管だ。非常に壊れやすい代物だという。
「供給されたセメントの強度が非常に低くて、中に入るべき鉄筋も不足しているため、土管はすぐに壊れてしまう」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面粉々になった部分以外は、すべて資材として使っているというのだから驚きだ。おそらく無理やりつなぎ合わせるのだろうが、漏水は避けられない。汚染された水が地面に染み込み、土壌が汚染されてしまうだろう。
少し古い数字だが、北朝鮮の白頭技術公社が2001年に示した資料によると、平壌市の上水道の漏水率は50%程度とのことだ。これは浄水された水が供給先に届くまでに漏れてしまう率を表したものだが、日本の平均漏水率は5%、韓国は9.9%であることを考えると非常に高い。施設の老朽化が漏水率の高さにつながっているが、新しく敷設したものであっても、この有様だ。
(参考記事:「道が糞尿まみれに」洪水で下水が逆流した北朝鮮の惨状)もう1枚の写真には、足場に乗ってマンションの外壁の塗装を行っている作業員の姿が収められている。足場は見るからに危なげで、段差もあれば、穴が空いているもの、さらには途切れてしまっているものもある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面通常、高所で作業する場合には、ヘルメットはもちろん、ハーネスを付けて万が一の落下事故に備えるが、そのヘルメットすら全員に行き届いていない様子がうかがえる。
(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出)「建設現場においては、突撃隊員の安全など眼中にない。当局は足場を丈夫に組まなければならないという考えすら持っていない」(情報筋)
実際、ある工事現場では1カ月間に14人もの若者が墜落死した例があるという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方、3枚目の写真には、何もせずに油を売っている人々の姿が写っている。腰を下ろしている人もいれば、腕組みをして立っている人もいる。いずれも現場をぼーっと眺めているだけのようだ。
「工事に参加せずに傍観してるだけの人が、働いている人よりも多い。指揮官がこんなに多いのかと思うほどだ」(情報筋)
このような光景は北朝鮮の工事現場でよく見られる。突撃隊は、地域や勤め先から押し付けられた建設ボランティアで、賃金はいっさい支給されない。幹部を目指す人ならともかく、一所懸命仕事をしたところで何の得にもならないので、すこしでも楽をしようと仕事をサボっているのだ。
(参考記事:朝鮮労働党でサボタージュ横行…金正恩失政で拍車)北朝鮮では、工期を優先して安全や質を度外視する「速度戦」が蔓延しているが、その背景には、このようなサボタージュが存在する。
(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故)「基礎工事から壁、床に入るべき鉄筋が不足しているため、強度が弱くことごとく手抜き工事だ。それでも資材が少ししかなく、上から早く完成させろと言われるので、(壊れた資材を組み合わわせて)使うしかない」(情報筋)
多数の労災事故を生み、最悪の場合は崩壊するというポンコツな建物を量産するのが、北朝鮮式工事の弊害だ。