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中国との国境に接した北朝鮮側の地域では、中国キャリアの携帯電話が当たり前のように使われている。正式な数は不明だが、中国の国境都市は北朝鮮で使うための携帯電話を販売する店が存在するなど、相当数が流入していることは間違いない。

これは、北朝鮮キャリアの携帯電話の使い勝手の悪さが原因だ。

国境を越えた商売をするに当たって国際通話やメッセンジャーアプリの使用は欠かせないが、これが使えないのだ。そもそもインターネットにも繋がらず、国内専用のイントラネットしか使えない。しかし、中国キャリアの携帯電話の使用は厳禁で、金正恩総書記は、何度も取り締まりを厳命してきた。

違反者が処刑された事例も少なくない。

(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面

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しかし、取り締まりに当たる保衛部(秘密警察)はこれに乗じて、業者からワイロをせびり取ってきた。定額のワイロを納めさせ、バレないように通話をさせる「サービス」まで行ってきたのだ。

(参考記事:北の秘密警察が携帯電話「定額サービス」

しかし、コロナ禍を契機に状況は一変し、取り締まりが強化された。

慈江道(チャガンド)では今年の4〜5月、中国キャリアの携帯電話を使用して密輸を行っていたとして、30人が逮捕され、重い判決が言い渡されたと現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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慈江道保衛局(秘密警察)を2回に分けて30人を摘発し、重罪を言い渡した。

秘密警察の本部に当たる国家保衛省は今年4月、「非法行為撲滅月間」を宣言した。これを受けて慈江道保衛局は取り締まりを強化し、多数の容疑者を逮捕した。先月16日と21日に判決が言い渡された。

保衛局は、江界(カンゲ)市の独山洞(トクサンドン)の空き地で今月21日、公開裁判を開いた。その場で局の幹部は次のように警告した。

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「外国情報に接する者とその家族には、この国に足を踏み入れる空間はない。代々根絶やしにしてやる」

逮捕者のうち、再犯者の一人の自宅からは、中国キャリアの携帯電話と中国人民元の入った麻袋が発見されことで、スパイ扱いされた。また、共犯者3人は先月16日、家族もろとも「管理地域」に入れられた。

また、他の人々に対しては10年以上の労働強化刑や無期労働強化刑(無期懲役)が言い渡され、初犯だった1人に限って比較的軽い1年の刑で済まされた。また、その家族は楚山(チョサン)、東新(トンシン)、雩時(ウシ)など「陸の孤島」に追放された。

当局は、中国キャリアの携帯電話ユーザーを単なる犯罪者ではなく、朝鮮労働党と国に反対するリスクを持った国内に動揺をもたらす者とみなし、外部からの情報接触による国民の思想の乱れを防ぎ、反政府活動の芽を徹底して摘む目的があると思われる。

慈江道は、険しい山に囲まれ、江界トラクター総合工場、江界精密機械総合工場、2・8機械総合工場など、民生用に偽装した軍需工場が集中している。また、米朝、南北首脳会談が行われ、咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡豊渓里(プンゲリ)の核実験場を破壊した2018年、核兵器を隠蔽する目的の施設が建設されたとも伝えられている。

(参考記事:北朝鮮、北部山間地の統制強化へ「核兵器隠蔽」が目的か?

それだけに、人々の移動が非常に厳しく制限されている。通行証がなくても多くの地域へ訪問が可能な平壌市民でも、慈江道だけは自由に訪れることができない。国際援助団体の職員も立ち入りを厳しく制限され、地元の人が他の地域の人と結婚すれば、慈江道で暮らすことを強いられるほどだ。

軍需工場に勤務する人々は優遇されているが、それ以外の一般庶民は苦しい生活を強いられている。

「国境地域では密輸をしなければ生きていけないのに、中国の携帯電話を使用したことでスパイに追い詰められて重刑を言い渡されるのを見ると、結局、私たちをすべて捕まえたり、殺せないので、徐々に追放してここ(慈江道国境地域)の住民を総入れ替えしようとしているようだ」(地域住民)

だが、たとえ当局が全住民を総入れ替えしようとも、中国キャリアの携帯電話を使う者はまた必ず現れるだろう。それほど北朝鮮の人々、特に商売をする人にとって欠かせないものだからだ。