7月末に襲った台風7号で甚大な被害を受けた北部の平安北道(ピョンアンブクト)では、多くの人員が投入されて復旧作業が行われている。
あまりの酷さに国際社会からは支援の申し出が相次いだが、北朝鮮はそれらを断り、自力での復旧作業を行っている。
(参考記事:金正恩が「増水で孤立した住民1000人を見殺し」にした理由)だが、大量の人員投入は被災者にとってありがた迷惑だったりする。補給を軽視する傾向が強く、腹をすかせた作業員が、地域で盗みを働いたりするからだ。金正恩総書記は重罰をもって対処すると警告したが、依然として状況は変わっていない。
平安北道の被災地で先月10日、被害復旧作業に動員された白頭山英雄青年突撃隊(半強制の建設ボランティア)所属のエリート隊員2人が緊急逮捕された。通常なら窃盗かと思うが、今回は事情が違うようだ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
この2人を逮捕したのは平安北道の社会主義・非社会主義連合指揮部で、容疑は韓国の音楽を聞いていたというものだ。しかし、これは表向きの話だという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面2人は、突撃隊の女性隊員に対するセクハラ、性暴力など様々な犯罪に関与した容疑が浮上している。
隊内では、この2人にセクハラなどを受けていない女性隊員はいないというほどで、「もう我慢できない」と怒りを爆発させた彼女らが通報したのではないかとの話も出ている。
北朝鮮では、国家が何らかの大規模建設を行うに当たって、各地の工場、企業所、機関に対して労働力の供出を求めるが、これを突撃隊と呼ぶ。表向きは全員が志願者だが、実際は半強制だ。報酬が一切支払われないばかりか、事故に遭っても一切の補償が得られない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一般の隊員には良いことなど何もないのだが、その一方で、突撃隊を率いるエリートたちには様々な「役得」がある。キツくて危険な作業から免除する代わりに、隊員たちから様々なワイロをせしめるのだ。
そして、そうしたワイロのひとつの形として「性上納」が存在するのである。
(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そうした悪習は、北朝鮮では半ば「常識」のように見なされ、問題視する風潮はほとんどなかった。しかし今回は、女性たちが泣き寝入りせず告発に動いた上に、当局がそれを受けて逮捕に踏み切った点が注目される。
北朝鮮国内においても、人権面での改善が生まれているのだろうか。だとすれば、人権意識に刺激を受けた庶民はいずれ、体制の様々な矛盾に対して声を上げるようになる可能性もあるのではないだろうか。