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北朝鮮北部の平安北道(ピョンアンブクト)、慈江道(チャガンド)、両江道(リャンガンド)など鴨緑江流域では、7月下旬から梅雨前線の影響で大雨が降り続いている。

金正恩総書記は、これら地域を「特級災害非常地域」と宣言し、内閣や地方政府、軍や安全部(警察)などに対して、被害防止と復旧活動に人員と機材を総動員せよと指示した。

また、自ら新義州(シニジュ)市周辺の被災地に乗り込み、陣頭指揮を取り、不甲斐ない担当者を厳しく叱責した。

(参考記事:金正恩氏、洪水被災地で住民救出を指揮…幹部らに激怒

新義州市郊外の鴨緑江の中洲の住民は、増水により孤立してしまったが、幸いにして救助された。ところが、全財産を失ってしまった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

2010年以来の大洪水となり、死者、行方不明者も多数発生していると見られるが、今のところの被害の全貌は明らかになっていない。

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鴨緑江の中洲には橋がかけられていないが、中国との国境に面しているため、島民は光り輝く中国のネオンサインを見つめながら、極貧生活を強いられている。彼らは洪水に直面し、テレビやミシンなど、家財道具の中で最も値の張るものを背負って避難していた。そこに救助用ヘリが飛来し、島民は万歳を叫び喜んだ。しかし、喜びも束の間、救助隊員からは残酷な指示が下された。

「(義州の)飛行場で元帥様が見ておられるぞ、みすぼらしい姿を見せるな」

そういって、テレビやミシンを捨てさせたという。持ち出しが認められたのは、リュックに収まる荷物だけだった。金正恩氏がいるということは現場にカメラが入っているということだが、泥だらけになった電化製品を担いだ一群では、「いい絵」とは言い難いとの判断があったのだろう。

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一人でも多くの人命を迅速に救助しなければならない状況で、重いテレビやミシンをヘリコプターに積むのは無理があるが、さりとて命に代えても守りたい大切なものを、「元帥様が見ている」という理由で捨てさせられた島民の心情はいかばかりだったろうか。

救出された人民は、あまりにも意外に雨風のひどい飛行場で自分らを待っている金正恩総書記を見て限りない感激と感謝の涙を流し歓呼の声を上げた。(朝鮮中央通信の記事より)

島民が流した涙は、助かった安堵からだったのか、家財道具を捨てさせられたことによる絶望からだったのか、あるいは、金正恩氏と共に写真に収まったという喜びからだったのか。その心中はわからないが、金正恩氏が訪れたことから、少なくとも復興事業がなされず放置されることはないだろう。また、質に難はあるが、新しい家を建ててもらえ、運が良ければ家財道具一式をプレゼントしてもらえるかもしれない。

(参考記事:「金正恩印の復興住宅」にまたもや不満続出

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ちなみに、ヘリコプターを飛ばした理由について、一部の人からは、黄金坪(ファングムピョン)や威化島(ウィファド)などから中国に避難する、つまり脱北を防ぐ目的があったのではないかとの声が上がっている。

いずれも幅数メートルの小川を挟んで中国に隣接しており、北朝鮮本土に避難するより中国に避難する方が現実的なのだ。

黄金坪経済特区で畑を耕している北朝鮮の軍人(画像:デイリーNK特別取材チームが2015年に中国側から撮影)
黄金坪経済特区で畑を耕している北朝鮮の軍人(画像:デイリーNK特別取材チームが2015年に中国側から撮影)