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2020年12月の北朝鮮・最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で採択された「反動思想文化排撃法」は、露骨に韓国発の文化コンテンツを狙い撃ちしたものだ。だが、条文をよく読むと、韓国製品そのものの持ち込み、流通も禁じている箇所がある。

第21条(各種奉仕活動を通じた流布禁止)
機関、企業所、団体と公民は、猥褻な文章や絵、商標をはじめ、不純な内容が含まれている物品を販売したり、退廃的で異色的な編集物を作って奉仕する行為をしてはならない。

この法律の成立前から、北朝鮮では韓国製品はご禁制となっていたものの、広く流通していた。2020年1月のコロナ鎖国で貿易が完全にストップしたことで、韓国製品もほとんど出回らなくなっていたが、最近になって再び人気を博している。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

中国との国境に接する新義州(シニジュ)では、高級化粧品販売を行っている商人が、韓国製の化粧品を扱うようになった。コロナ禍では品物が入荷しなかったが、最近ではカネさえあれば買えるという。

主な顧客層は幹部の家族やトンジュ(金主、ニューリッチ)で、一般住民の手には届かない高級品だ。かつての北朝鮮で高級品と言えば日本製だったが、今ではすっかり韓国製に取って代わられたのだ。

(参考記事:命が危なくてもやめられない…再始動した北朝鮮の「韓流ビジネス」

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ところが、最近になって偽物が多く流通するようになった。それも、肌に塗ると痒みや腫れが出るなどの問題が起きる質の悪いものだ。偽物業者は、韓国製のラベルを偽造して製品に貼るのではなく、むしろ剥がして売っている。それは、北朝鮮の事情が関係している。

韓国製品の取り扱いは禁じられているため、業者は、中国から持ち込む前にラベルを剥がしてしまう。「ラベルがない製品は韓国製」との認識が消費者の間で定着しているため、それを悪用しているのだ。

「南朝鮮(韓国)製品の取り締まりがコロナ前より厳しくなっていることを誰もがよく知っているので、ラベルがなくても南朝鮮のものであれば疑わずに購入する」(情報筋)

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例えば、市内に住む30代のキムさんは先月末、「南朝鮮の新製品で、3日間塗るだけでファンデーションが必要ないほど肌がきれいになる」との商人の売り込みに引っかかり、製品を購入した。

数日間使ってみると、確かに肌はきれいになった。しかし、その後に急に肌が痒くなり、顔がむくんでしまった。キムさんはクレームの電話を入れた。ところが、商人は逆ギレするばかりだったという。

「他の人は何の問題もないのに、何を言うか!」

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そこでキムさんは、あちこちを当たって、この商人から同じ商品を買った5人を探し出した。そして、問題がなかったかと尋ねてみたところ、そのうち3人が自分と同じ症状があったことを確認した。

偽物の販売は重罪だ。北朝鮮では2019年3月、開城松岳食料工場の「松岳(ソンアク)焼酎」のラベルを貼った密造酒が大量に出回り、これを飲んで亡くなったり失明したりする人が続出した。ラベルは、国営の印刷工場が印刷した偽物だった。

この事件には金正恩総書記も激怒し、密造酒の売買に関わった数人が公開処刑されたとの情報がある。

(参考記事:最愛の側近の息子も犠牲か…金正恩氏「ニセ焼酎」で公開処刑

だが、キムさんは商人にこれ以上クレームをつけることも、安全部(警察署)に通報することもできない。偽物とは言え、韓国製だと思って買ったからだ。

「本物であれ偽物であれ、南朝鮮の製品であると思って購入したと見なされれば処罰を免れない」(情報筋)

このような「ラベルのない製品は韓国製」という認識を悪用した偽物が多く出回るようになってから、消費者の間では「ラベルのない製品をむやみやたらに買ってはいけない」という認識が広がりつつあるとのことだ。