北朝鮮は27日夜、予告通り軍事偵察衛星の打ち上げを行ったもようだ。しかし、中国からその様子を捉えた映像を見る限り、衛星の運搬ロケットは上昇中に爆発して飛散したようだ。
上手く行っていないのは、これだけではない。
今月14日に竣工式が行われた北朝鮮の首都・平壌の北に位置する新興住宅地「前衛通り」。25階から80階建ての超高層マンションが立ち並び、いかにも金正恩総書記が好みそうなタワマン団地だ。高さは公表されていないが、北朝鮮で最も高いタワマンの松花(ソンファ)通りの83階建て、300メートルに匹敵にするものだろう。
国営の朝鮮中央通信は、19日から入居が始まったと報じた。記事は戦争老兵(朝鮮戦争参戦者)、栄誉軍人(傷痍軍人)、教育者、子どもの多い世帯などが入居したと取り上げている。特権層ではなく、一般人が入居していることを強調した形だ。
ところが、入居は順調に進んでいないようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面新義州(シニジュ)から平壌に出張に来た情報筋は、引っ越しの過程で混乱が起きていると述べた。エレベーターが設置されているが、電気が午前11時から午後1時、午後8時から11時の1日5時間しか供給されない。そこで当局はこんな方法を使っている。
「番号札を配り、入居者がエレベーターを使う順番を決めた。タワマンの前にはエレベーターの順番を待つ引越荷物が山積みになっている」(情報筋)
こんな状況なので、1日10世帯も入居できないとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面問題はこれだけに留まらない。
「マンションの洗面場とキッチンには上下水道が設置されているが、水道水も時間を決めて供給されるため、入居者は、家の掃除と荷物の整理に苦労している」(情報筋)
また、手抜き工事の可能性も懸念される。その実態について、デイリーNKジャパンは、2016年に脱北した元朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士から話を聞いいている。この元兵士は、平壌のタワマン街である「未来科学者通り」の建設に動員された経験があるという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「当初は安全管理についても関係当局から厳しく指導されていました。しかし、現場に供給されているはずの資材が足りないといったことが、次第に増えました。しかも、どんどん工期が迫ってくる。セメントと砂の混合比率や鉄筋の使用量が、上層階に行くほどいい加減になっていきました。北朝鮮で地震はほとんど起きませんが、いずれ何かの拍子に、建物がぜんぶ崩壊してもおかしくありません」
(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故)
日本のタワマンの場合、階数+3カ月〜5カ月くらいかかると言われている。つまり、80階建てなら7年ほどかかることになるが、前衛通りのマンションはわずか1年ちょっとで完成した。それも1棟や2棟ではなく、全体で4100世帯が入居できるほどの規模なのにだ。なお、韓国・釜山の70〜80階建ての3棟のタワマンからなり、1788戸が入居する斗山(トゥサン)ウィーブ・ザ・ゼニスは、建設に4年2カ月かかっている。
このようなスピードだけを重視した建設方法は「速度戦」と呼ばれるが、それで建てられたマンションは質が度外視され、手抜き工事となることが多い。平壌では2014年5月、23階建ての新築マンションが崩壊し、約500人が死亡する大惨事が起き、警察幹部が遺族に謝罪する異例の事態が起きている。