韓国の脱北者団体が、北朝鮮に向けて大量のビラを入れた風船を飛ばしたと韓国メディアが報じた。
自由北韓運動連合のパク・サンハク代表は、今月10日午後11時ごろ、ビラ30万枚とK-POPやトロット(演歌)の動画を保存したUSBメモリーを、大型の風船20個に吊るして、北朝鮮の方向に飛ばしたと明らかにした。
風船には「金正恩、こいつこそが不変の逆賊、民族の敵」と書いたバナーも吊るしたととのことだ。
北朝鮮に向けてビラを飛ばす行為は、かつて韓国軍が心理戦の一環として行っていたが、2000年の南北首脳会談を受けてあまり行わなくなった。それに代わってNGOが行うようになった。自由北韓運動連合は2005年からこうした活動を行っているが、韓国政府は、北朝鮮を刺激する、軍事境界線の韓国側に住んでいる住民を危険に晒すなどの理由で制止に乗り出した。
現場でビラを飛ばそうとする関係者と、それを阻止しようとする警察、近隣住民が揉み合いになる騒ぎも起きた。
(参考記事:韓国警察「対北ビラ」散布団体を家宅捜索)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
【動画】2020年6月、黄海に浮かぶ北朝鮮にほど近い席毛島(ソンモド)からビラを飛ばそうとするパク代表ら一行は、自分たちが危険に晒されるとする地域住民が口論を繰り広げた。
文在寅政権(当時)は2020年、南北関係発展法を改正し、第24条でビラを飛ばす行為を禁じた。ところが憲法裁判所は2023年9月、これを違憲とする判断を下したことで、再び合法的にビラを飛ばすことが可能になった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面延世大学校政治学科のチャン・ドギョン氏らが2015年にまとめた論文「民間対北朝鮮ビラの目的と効果の研究」は、心理戦としての効果があるとする一方で、ビラを飛ばす団体が脱北者からなり、北朝鮮の体制に対する敵愾心が強いため、効果的な心理戦の側面より、団体の存在感を示すための過激な表現が使われていると指摘した。
また、金正恩総書記に対する攻撃は、むしろ反発を生むリスクがあるとして、より緻密な作戦が必要だとした。
論文は100キロ以上離れている首都・平壌まで風船を飛ばすには技術的限界があるとも指摘しているが、かなり遠くまで届いたとの報告があり、金正恩総書記の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会副部長が激しく反発していることから、一定程度の効果はあるようだ。
(参考記事:韓国から飛ばされた「脱北者ビラ」回収で大混乱の北朝鮮)