北朝鮮の金正恩総書記が9日、ロシアの対独戦勝79周年に際し、プーチン大統領に祝電を送った。
金正恩氏は祝電で、「大統領と勇敢なロシアの軍隊と人民が強国の威力で帝国主義の覇権政策と強権に敗北を与え、公正で平和な多極世界を建設するための闘いで新たな勝利を収めることを願う」と強調している。
北朝鮮はこの祝電に限らず、「ロシア勝利」の主張を繰り返している。ウクライナ軍の兵器不足などによるロシアの優勢に乗じた「悪ノリ」と見ることもできるだろう。しかし2022年の開戦初期、ロシアの攻勢が挫折しかけた時期にも、北朝鮮当局が内部で「ロシアが勝つ」と強調していたのも事実だ。
北朝鮮は当初、国内向けメディアでウクライナ侵攻への言及を避けながらも、朝鮮労働党は党員に限り、詳細を伏せた上で情報を伝えていた。
その一方、ロシアに派遣された労働者に対しては、侵略の事実を知っている前提で思想教育を行った。デイリーNKの現地情報筋によれば、その内容は「ロシアは、同じ国だったウクライナに派兵した」とした上で、「必要に応じて、われわれも南側(韓国)を占領できる」「われわれは南朝鮮を一気に攻撃できる」などと主張するものだった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面さらに「ロシアが優越した軍事力をもってしても、一気にウクライナを占領しないように、われわれも南朝鮮の事情を考慮してやっている」と主張。そして、「戦争はロシアの勝利で終わるだろう」としていた。
北朝鮮が、客観的な根拠をもって戦争の成り行きを予測していたとは思えない。ただ同国は、世界の紛争地に兵器を輸出してきた「武器商人」の顔も持っている。戦争の展開について、何らかの「勘」や「読み」が働いたとしてもおかしくはない。
(参考記事:「迷惑だ。余計なことを」プーチンからの「贈り物」にブチ切れ状態の北朝鮮国民)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、金正恩氏は昨年末以降、韓国との平和的な南北統一を放棄したうえで、「戦争になれば平定する」としている。現実の推移と重ねて見ると、不気味な感じもする。
こうした言動から見て思うのは、金正恩氏は平和で安定した情勢よりは、「乱世」を望んでいるように見えるということだ。北東アジアでは、国力の最も小さい北朝鮮こそ「乱世」に弱いはずなのだが、民主主義が存在せず、民の苦しみを意に介さない独裁者にとってそんなことは二の次なのである。