米国務省は22日、世界各国の人権状況を記録した「2023年国別人権報告書」を発表した。
北朝鮮についてこの報告書は、「新型コロナのパンデミック(世界的大流行)後、公開処刑が減少したが、最近は国境封鎖緩和とともに再び大きく増加する様相を見せている」と指摘。また、民間人に現場学習という名目で公開処刑を参観させているとも言及した。
コロナ禍の下での典型的な事例のひとつが、2022年1月に行われた男女のカップルの刑執行だ。韓流コンテンツを密売していたことが罪に問われたもので、女性は平安南道保衛局(秘密警察)の政治局長の娘という「お嬢様」だった。しかし、父親の権力も及ばず極刑の判決を受けた。刑場には300人が引き出され、執行場面を見ることを強制されたという。
コロナ禍の前には、より大規模なものもあった。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋の話として、2019年2月に清津(チョンジン)市内中心部で公開裁判が行われたが、ここには数万人の住民が動員され、死刑判決を受けた被告がその場で銃殺される一部始終を見ることを強いられたと伝えている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方、3月には市内の水南(スナム)市場のそばの河原でも公開裁判が行われ、被告女性3人のうち、2人に極刑判決が下され、執行された。3人の罪状は「迷信行為」、つまり占いだった。
3人は「七星組」というグループを作り、「神が乗り移った」という3歳と5歳の子どもに占いをさせ、金品を受け取り、全国を回っていたという。北朝鮮では庶民から党幹部、占いを取り締まる立場の司法機関の幹部に至るまで、何か重要なことをする前に運勢を見るのが一般化しているが、当局はそれを体制維持のリスク要因とみて亡き者にしたものと思われる。
ちなみに、北朝鮮の刑法256条は、金品を受け取って迷信行為を行った者は、1年以下の労働鍛錬刑(懲役刑)に処すと定めている。刑法附則11条は「例外的に無期労働刑(無期懲役刑)、死刑を適用できる範囲として、複数の行為の罪状が非常に重い者、全く悔悛していない者を挙げている。つまり、誰でも極刑にできるということだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩政権は2018年までの数年間、公開処刑を控えていた。国際社会の批判の声を意識してのものと思われるが、2019年より再開し、近年では乱発気味だ。江戸時代のさらし首と同じように、犯罪者を見せしめにすることで犯罪を抑制しようという、現代の人権感覚では受け入れられないものだ。それでも犯罪は減らず、公開処刑を行えば行うほど国際社会の批判は高まる。まさに「誰得」なのだ。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
金正恩総書記は、経済活動の自由を認め、国民の生活レベルを向上させることが、最も効果的な犯罪抑制策であることに、いつになったら気づくのだろうか。