1990年代の中国・北京では、犬の飼育が禁じられていた。摘発された場合、有無を言わさず、飼い主の目の前で殺処分することもあった。しかし2021年11月、中国の江西省で、新型コロナウイルスの流行防止措置としてペットを殺処分する事例が相次いだ際には、世論の激しい批判を招いた。
アニマル・ウェルフェアという考え方が浸透した今の中国で、動物に対するひどい扱いは社会にとって受け入れがたいものになりつつあるのだ。
ところが、人間の権利すら保障されていない北朝鮮では、動物の権利などは考えるべくもない。
北朝鮮で犬は従来、番犬、または食用の目的で飼われていたが、最近ではペットとして飼う人が増えている。これに対して当局が「非社会主義現象」、つまり社会主義にそぐわない行為として取り締まりに乗り出したと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
朝鮮社会主義女性同盟(女性同盟)は先月末、このような通達を出した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「犬が人と一緒に生活したり寝たりすることは、社会主義生活様式にそぐわない」
北朝鮮で犬をペットとして飼う習慣が広がり始めたのは2000年代初頭のことだ。その多くが幹部などの富裕層で、泥棒から生命と財産を守る目的の方が大きかったため、さほど問題視されることはなかった。
ところがポメラニアンやシーズーなどを、番犬ではなくペットとして犬を飼う人が増えた。これに対して当局は「ペットを飼うのは非社会主義」「ブルジョア臭がする」と規定して警告したが、さほど効果はなかった。しかし、最近になって取り締まりを強化している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「犬に人のように服を着せたり、頭に飾りをつけたり、死んだら丁重に布にくるんで墓まで作る行為は、資本主義社会で金持ちがお金を浪費するブルジョワ的な行為だ」(女性同盟)
犬はあくまでもその特性に合わせて外で飼育し、死んだら食べる対象に過ぎないというのが、女性同盟の考え方だ。また、革として利用するためでもあるともしている。そこから逸脱する行為は、根絶されるべきだと主張している。
(参考記事:北朝鮮「金持ち女性」たちの密かな楽しみ)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面当局はしばしば、「犬を飼育してその革を供出せよ」との指示を国民に出している。犬を飼う人は増えているのに、指示に応じる人は少ないのは問題だとして、今回の指示に従わなれば、大々的な根絶キャンペーンを行うと警告したしたという。
女性同盟の下部組織では、「中央から指示が下った以上、社会的に物議を醸さないように処理し、社会主義の生活様式にそぐわない風潮をなくさなければならない」としているが、多くが普通の女性である女盟員は「愛犬を殺すわけにもいかないし、捨てるわけにもいかない、どうすればいいのか」と嘆いているという。