北朝鮮の2家族8人を待ち構える「陸の孤島」の残酷生活

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北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡は、2000メートル級の山と国境を流れる鴨緑江に囲まれ、郡全体の9割以上が山地を占める。主な産業は林業で、農耕に使える土地はわずか2.5%しかない。それでも道内でコメやトウモロコシが最も多く取れ、スイカやトマトの名産地として知られる。

平野の広がる首都・平壌周辺や西海岸一帯と比べると、まさに奥地の中の奥地だが、さらなる奥地に追放される人々もいる。家族の中に脱北者がいる「脱北者家族」は、脱北の恐れが高いとして要注意人物に指定され、厳しい監視を受けている。さらには、国境から遠く離れた「陸の孤島」に追放されることもあるのだ。

最近、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた2家族8人もそうだ。

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金亨稷郡では今年春から、保衛員(秘密警察)が各人民班(町内会)を回って、「脱北者家族と、中国キャリアの携帯電話の使用が摘発された者は、理由を問わずに追放する」との方針を伝えてきた。韓国との通話が確認されれば、法的処罰に加え、家族も連帯責任を負わされ全員追放すると警告している。

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そして先月、郡内に住んでいた2家族が、韓国に住む家族から仕送りを受け取っていたことがわかり、それぞれ1人ずつが6カ月間の労働鍛錬刑(懲役刑)を受けた上で、家族全員が奥地の村に追放された。

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「恵山(ヘサン)で活動する送金ブローカーは複数の家を回って、ある程度の額が集まったら金亨稷郡にやってくるが、ここは国境に接していて中国に行きやすいために取り締まりが厳しく、保衛部(秘密警察)の情報員(スパイ)も多いため、しばしば問題になる」(情報筋)

この2家族は、恵山からやって来たブローカーから送金を受け取ることになっていたが、後をつけていた保衛員に現場を押さえられてしまった。現金に手も触れる間もなく没収され、追放されてしまったとのことだ。なお、恵山も金亨稷郡も中国との国境に接している点では変わりないが、後者のほうが人の目が届かない地域が多いことから、取り締まりが厳しくなっているものと思われる。

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当局は、国境に近い地域に住んでいる人ほど脱北の可能性が高いと見ており、それはあながち間違いではない。それで、ちょっとした違法行為で、国境から遠く離れた地域に強制移住させられる。

2家族が向かったのは、道内の豊西(プンソ)郡だ。朝鮮半島で3番目に高い北水白山(プクスベクサン、海抜2522メートル)を含む山脈に囲まれ、非常に寒く降水量が少ないため、アワやヒエ、ジャガイモ、ソバと言った作物しか取れない。

そんな極貧の地域の、屋根が抜けた牛小屋より粗末な家に住まわされて悲惨な日々を送っている。郡の最も奥にある村から国境までは150キロも離れており、厳しい監視を受けているため、脱北を試みるのは非常に困難だ。もといた場所に生きて戻るのは絶望的で、あるいは死んでも戻れないかもしれない。

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かつて、韓国に住む家族を持つ人は、仕送りを受け取り、それなりに安定した暮らしをしていた。受け取った外貨は市場に流入して、経済活動を支え、保衛部も彼らからワイロを取り立てることで収入を得ていた。

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ところが、南北関係の悪化に伴い、脱北者家族に対する締め付けが強化され、生活費であっても仕送りを受け取ったことがバレれば処罰される。今回の事件を知った近隣住民は、「悪いカネでもなく、餓死しないようにと送ってきたものに過ぎないのに、なぜ追放までしなければならないのか理解できない」と当局のやり方を批判している。

(参考記事:北朝鮮が「脱北者家族」への締め付けをさらに強化