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北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)で、息子が実母を殺害する事件が起き、地域社会に波紋を広げていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

10代の少年とその両親は元々、両江道の中心都市の恵山(ヘサン)で暮らしていた。両親は密輸や人身売買などの違法行為で生計を立てていたが、逮捕され、教化所(刑務所)送りとなった。父親はやがて獄死。母親は収監され続け、少年は独りになってしまった。

親戚からも見放された彼は、人民班(町内会)と地域の安全員(警察官)により、中等学院(孤児院)に預けられた。しかし、そこでも犯罪者の子だと教師から蔑まれ、毎日トイレ掃除をさせられていた。そのときに彼はこう思っていたという。自分をこんな目に遭わせた両親にいつか復讐してやると。空腹と孤独に耐えかねた少年は中等学院を飛び出し、市場周辺で放浪生活を続けた。

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そして今年の春。母親がようやく釈放された。しかし、恵山に戻ることは許されず、山奥の豊西(プンソ)に追放された。母子は、豊西郡住宅建設突撃隊の宿舎の隣りにある小さな倉庫で暮らすようになった。母は突撃隊で働き、少年は民宿で働きつつ学校に通うというギリギリの生活をしていた。

しかし、そこも少年にとっては地獄のようなところだった。後の取り調べで少年は、母親が教化所を出所した追放者だとして、クラスメートからいじめを受けていたのだ。少年は徐々に両親に対する恨みをつのらせていった。

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先月末のことだった。少年は、家の全財産であるコメ5キロを売り払い、タバコと酒を購入した。これを知った母親は激怒。すると少年は凶器を振り回し、母親を殺害してしまった。

少年は、凶器を手に持ったまま人民班長を訪ねて自首し、両江道安全局と豊西郡安全部の安全員が彼を逮捕した。

取り調べで少年の身の上を知った安全員は、深く同情し、「子どもを偏見なく見守るどころか差別、虐待したから少年が犯罪を犯すのだ」と、彼のいた中等学院に対する調査を行う提議書を両江道に提出した。

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一方、この家族の悲劇的な話を聞いた恵山の人々は、「生活に苦しむ人に道を開いてあげるどころか、密輸罪で逮捕して、崩壊寸前となった家族は少なくない」と、国に非難の矛先を向けたという。

恵山は元々密輸で持っていた地域だ。自由な出入国、貿易ができるのならば、わざわざ密輸を行う必要などないが、貿易は国がコントロールするという建前のせいで、一般人は密輸をせざるを得ない。恵山の住民たちにとって、今回の話は決して他人事ではないのだろう。

(参考記事:「もう一本の軍事境界線」を作っても防げない北朝鮮の密輸と脱北