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中国、ロシアなどで大学に通う北朝鮮出身の留学生のもとに今年4月、大使館を通じてこんな命令が届いた。

「帰国の準備をせよ」

北朝鮮は2020年1月、新型コロナウイルスの国内流入を恐れて国境を封鎖、人と物の出入りを一切禁じた。留学生や派遣労働者、外交官など、海外在住の北朝鮮国民の帰国も禁じられた。密かに国境を越えて帰国しようとする者は容赦なく射殺された。

(参考記事:北朝鮮軍、国境地帯で密入国者を射殺し遺体を放置

だが、北朝鮮の新義州(シニジュ)と中国の丹東を結ぶ貨物列車は、昨年1月に運行が再開され、一時的な中断をはさみ、同年9月末からは運行が続けられている。また、今年7月から国境沿いの地域でのマスク着用義務を解除するなど、非常に慎重ながらも国境再開に向けた動きを見せている。

そして、留学生にも帰国が迫っている。中国のデイリーNK情報筋によると、丹東のホテルに中国各地の大学に通っている留学生が集結させられた。その数は100人から200人。宿泊費の負担を考えると、待機期間はそう長くならないと見られるが、いつ帰国が実現するか、他に留学生が集結させられている場所があるかは確認されていない。

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16日午前11時過ぎには、新義州から丹東に向けて2台のバスが出発する様子が目撃されている。情報筋は、このバスには乗っていたのはテコンドーの選手団だと述べた。19日から26日までカザフスタンで、国際テコンドー連盟世界選手権大会が開催されるが、ここに出場する選手や関係者が乗っていたのだ。

そして、このバスに、丹東で待機させられている留学生が乗せられて帰国させられるとの見方がある。

コロナ前、留学生など海外在住の北朝鮮国民は、1年から数年に1回、本国からの命令で一時帰国させられていた。「水抜き」――つまり、外国生活で染まってしまった資本主義生活、思想を、徹底して北朝鮮式に染め直す思想教育を受けるためだ。また、貿易関係者は、営業成績や韓国人、特にキリスト教関係者との繋がりがないかを厳しく問われる。

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成績が悪かったり問題があったりすれば、赴任先に戻ることは許されず、よくて平壌の本社勤務、悪ければ山奥の農村の閑職に追いやられる。最悪のパターンは管理所(政治犯収容所)送りだ。

そのため、彼らにとって一時帰国は決して楽しいものではない。

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なお、留学生は一時帰国の最優先対象とされている。コロナ禍において、脱北したり、行方不明になったりした者が少なからず存在し、当局が問題視しているからだ。その次に北朝鮮レストランの従業員、貿易関係者、派遣労働者の順で帰国させる計画だ。

(参考記事:「40人が逃亡」欧州駐在の北朝鮮外交官、相次ぎ亡命か

そんな中、平壌と北京を結ぶ国際列車が22日にも運行を再開するとの話が出ている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、22日の列車に乗って、平壌から北京に向かう人々が出国準備を行っていると伝えた。その中には、多くの貿易関係者も含まれている。今のところ、22日の再開は決定事項であるものの、上部からの指示があればいくらでも変更されうると情報筋は述べた。

東海岸の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の羅先(ラソン)と吉林省の琿春を結ぶルートは既に再開されており、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)税関も再開の噂が何度も流れている。また、北朝鮮旅行を扱う各旅行会社も、今月中に国境が開かれ、外国人観光客の受け入れが再開されると見ている。

多少の前後はあっても、3年以上にわたって固く閉じられていた北朝鮮への扉は、まもなく開かれることになるだろう。

(参考記事:北朝鮮の国境封鎖、近く本格解除の可能性