北朝鮮の人々が常に胸に付けている肖像徽章――いわゆる金日成バッジ。外出時には欠かせないもののように思えるが、実際のところ必ずしもそうではなく、付けていない人も少なくないという。
バッジが大切にされていたのは昔の話。その後、市場で売り払って現金化する人が続出したが、今ではもはや、その価値すらない。
(参考資料:「白菜よりも安い」北朝鮮で金日成バッジの価値暴落)
金銭的な価値はなくとも、持っていなければ問題になる。抜き打ち的に取り締まりが行われるからだ。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、最近になって清津(チョンジン)市内の路上で、バッジを付けているかを含めた服装検査が強化されたと伝えた。
青年糾察隊(取り締まり班)は、道の至るところに立って、通りかかった若者のバッジと服装をチェックする。バッジを付けていなかっったり、社会主義生活様式にそぐわないとされる服装をしていたりすれば、取り締まりの対象となる。ただ、このような服装件は今に始まったことではない。
(参考記事:金正恩「網タイツ禁止令」で北朝鮮女子の命がけファッション)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
以前から行われてはいたものの、最近に入って非常に厳しくなったというのだ。
まず、摘発された若者は、農場に送って強制労働の処分を下す。深刻な農村の労働力不足を補うために、わざと検査を厳しくして摘発者を増やしているようだ。だが、処罰はこれだけではない。
(参考記事:女子大生40人が犠牲…北朝鮮幹部「鬼畜行為」で見せしめ)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面職場や学校などに通報して、思想闘争会議の舞台に上げる。つまり、つるし上げにするということだ。かつては、本当にひどい場合に限ってこのような手法が使われたが、今では頻繁に行われている。
「かつて、このような取り締まりに引っかかっても、青年同盟に呼び出されて批判書を書くだけで済まされたが、最近では所属する機関で思想闘争会議を開いて、公開的に批判し、恥をかかせる」(情報筋)
先月30日には、市内の30代の女性労働者が、ベルボトムを穿いていたというだけで青年糾察隊に摘発され、翌日には職場に通報された。今月3日に、職場で思想闘争会議が開かれ、女性には集中的な批判が浴びせかけられた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ちなみに、北朝鮮では女性がズボンを穿くことは好ましからざる風潮だとして、禁止されていた時期があった。女性が自転車に乗ることも許されていなかった。
(参考記事:ジーンズ禁止に北朝鮮国民が反発「ズボンと思想に関係が?」)国内の状況が緊迫すると、締め付けを強化して乗り切ろうとするのが、北朝鮮当局のやり方だが、国民のファッションにまで口出ししようとするのは、今の北朝鮮の人々には受け入れられず、強い不満を生むばかりだ。
ちなみに、取り締まる側の青年糾察隊だが、高級中学校(高校)の生徒や大学生が参加させられ、取り締まりの結果を報告しなければならない。報告書に何も書かれていなければ、サボっていたとみなされるため、通行人に言いがかりをつけて取り締まり、点数稼ぎをするのだという。そうしたやり方にも批判の声が高まっている。