食料品価格は下落するも庶民の手には届かない北朝鮮の現状

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5月まで上昇が続いていた北朝鮮の市場での食糧価格が、先月には下落傾向に転じた。

デイリーNKは、定期的に平壌、新義州(シニジュ)、恵山(ヘサン)の3都市で、コメ価格、対米ドル、中国人民元のレートを調査しているが、新義州の市場では今月25日、コメ1キロの価格が5350北朝鮮ウォンで、11日の5700北朝鮮ウォンと比べて、2週間で6.1%下落したことがわかった。(1000北朝鮮ウォンは約17円、以後いずれも1キロあたりの価格で、6月11日と25日の比較)

北朝鮮国内で物価が高い方である恵山の市場では、コメが6000北朝鮮ウォンから5600北朝鮮ウォンになり、6.7%下落した。平壌でも5500北朝鮮ウォンから5400北朝鮮ウォンに、わずかながら下がった。

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トウモロコシの場合、新義州では3000北朝鮮ウォンから2520北朝鮮ウォンに、平壌では2700北朝鮮ウォンから2540北朝鮮ウォンに下がった。

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穀物価格の下落は、今月中旬から始まった小麦、大麦、ジャガイモの収穫に加え、昨年10月から中国とロシアからコメ、トウモロコシ、小麦などを大量に輸入していることが影響しているものと思われる。

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中国の海関総書によると、昨年10月から今年3月までの6カ月間、北朝鮮に輸出されたコメの額は6723万ドル(約96億8000万円)で、コロナ前の2018年の1年間の輸出額の2260万ドル(約32億5000万円)よりはるかに多い。

北朝鮮農業が専門の韓国・グッドファーマーズのチョ・チュンヒ研究所長は、「穀物の収穫が始まる5月が春の食糧難が最もひどく、6月中旬頃から食糧価格が下落する傾向にある」「ジャガイモ、小麦、大麦はいずれも昨年より生産量が増加していると見られ、今後1カ月程度は、収穫が進むにつれて、穀物価格が多少安定する可能性がある」と述べた。

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一方、それ以外の食料品価格も下落傾向が続いている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によれば、会寧(フェリョン)の市場で、先月には1キロ1万5000北朝鮮ウォンだった食用油が、今月19日の時点で1万1000北朝鮮ウォンまで下がった。また、450ミリグラム入り化学調味料は1万4000北朝鮮ウォンから1万3500北朝鮮ウォンに、卵1キロ(15個)は1万2500北朝鮮ウォンで売られ、コロナ前より安くなった。

道内最大都市の清津(チョンジン)の市場でも、概ね同じような価格の動きを見せている。ただ、穀物、食料品価格が下がっても、買う人はあまりいない。密輸や商売への取り締まりが厳しく、懐事情が厳しいからだ。

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「コロナ後の生活難が続き、ポリッコゲ(春窮期)まで合わさり、1日3食食べられる人は数えられるほどしかいない。市場の食料品価格がいかにさがっても、買おうとする人が多くなく、商人は儲かっていない」(情報筋)

消費者の収入が減ったことで物が買えず、商人は儲けがなく、自宅用の食料品が買えないという悪循環に陥っているのだ。

(参考記事:地域経済を破滅に追い込んだ北朝鮮の「貿易独り占め政策」

市民が求めているのは唯ひとつ。コロナ前のような密輸の再開だ。

「住民は皆が皆、密貿易が再開されない限り、市場が活性化されず、生活苦はよりひどくなるだろうと言っている」(情報筋)

当局は、肥大化した市場の機能を抑制し、密輸もブロックすることで、貿易を含めた経済全体の主導権を取り戻そうとしているが、商業や貿易の発展で潤ってきたこれら地域にとっては死活問題。今後しばらくは、理想、いや妄想を追い求める国と、なんとかして生活苦を打開して、コロナ前のように比較的安定した暮らしがしたい国民との「闘い」が続くだろう。

(参考記事:国家がどう頑張っても押し戻せない北朝鮮の「市場経済化」