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北朝鮮では、春先から麦の収穫が始まる初夏までは「春窮期」だ。朝鮮では「ポリッコゲ(麦の峠)」と言われる。昔からこの時期は、前年の収穫の蓄えがなくなり、飢えに苦しむ季節なのだ。韓国では昔を懐かしむときに使われる言葉だが、北朝鮮では現役バリバリの用語だ。

2020年のコロナ鎖国以降、飢えに苦しんだ末の窃盗など、犯罪が深刻化している。北朝鮮のハッカー集団が日本から1000億円近い暗号資産を盗んでいたことが話題を集めているが、その一方で北朝鮮国民は明日を生き抜くために、種イモを盗み出している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:「飢えた兵士が農家を襲撃」窃盗も倍増、混乱が深まる北朝鮮

両江道(リャンガンド)の情報筋は、霜に強いジャガイモは今月9日、霜に弱い大豆は12日になってから種まきを初めたが、それを掘り出して持ち去る窃盗事件が相次いでいると伝えた。

一度蒔いた種イモを掘り出して盗む現象は、食糧難が最も深刻だった「苦難の行軍」の最中の1998年、そして前年の貨幣改革(デノミネーション)が大失敗して国中が大混乱に陥った2010年に見られたものだが、それが今年また起きているというのだ。食糧難の深刻さがわかる。

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恵山(ヘサン)の市場では、コメ1キロが6000北朝鮮ウォン(約96円)で売られているが、トウモロコシ1キロは3400北朝鮮ウォン(約54円)で、先月より1割以上値上がりしている。

救荒植物であるトウモロコシは、飢えに苦しむ北朝鮮国民を救い続けてきた。特に昨今の食糧難では、コメに手が出せずトウモロコシを食べる人が増えている。金正恩総書記が提唱した、トウモロコシ栽培を減らし、麦の栽培を増やして食生活を改善しようという方針は、極めて現実離れしている。

(参考記事:「どうやっても無理」と本音を言えば死刑にされかねない金正恩の農業政策

麦が収穫できるのは6月中旬以降になる。それまでは山菜とほうれん草で凌がなければならないが、これらも、両江道では今月末にならなければ市場に出回らない。3月、4月、5月を乗り切るには、トウモロコシが欠かせないのだ。

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現地の農業関連情報筋によると、ジャガイモは等間隔で植えるため掘り出しやすく、大豆は掘り出して数日置けば豆もやしが生えるため、貴重な栄養源となる。そのため、盗みが横行しているのだ。

中でも三池淵(サムジヨン)、普天(ポチョン)、白岩(ペガム)など、道内でも特に山がちな地域にある協同農場での窃盗が深刻だ。報告を受けた朝鮮労働党両江道委員会は12日までに、種を守るための武装保衛隊を立ち上げるよう指示した。

一方、自宅の畑にジャガイモや大豆を植えている人は、畑に泥棒よけの網を張り、夜通しで警戒に当たっている。こんな状況は今月末まで続くと、情報筋は見ている。

(参考記事:「キムチシーズン」を迎えた北朝鮮で多発する野菜泥棒