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金正日の死亡後、大韓民国をはじめとする国際社会の視線はポスト金正日体制が成功するかどうかへ傾いた。数十年間に渡り個人独裁を行使してきた金正日の不在は、いったい北朝鮮をどの方向へ導いていくのだろうか。

国内外の報道機関や専門家らは金正日の死亡が伝わって以降、北朝鮮体制の未来に対するさまざまな展望を打ち出している。新しい指導者である金正恩の統治能力や東アジア情勢に及ぼす影響などに対する多様な可能性が提起されているが、現状を述べるにとどまる解釈が多いという評価だ。

そんな中、北朝鮮体制の属性と金正日の統治スタイルに基づいてポスト金正日時代を予測する本が出版された。1980年代「主体派のゴッドファーザー」と呼ばれ、主体思想運動の理論的基礎を整えたキム・ヨンファン北朝鮮民主化ネットワーク研究委員が発刊した「ポスト金正日」(シデジョンシン社)だ。

著者は2度に渡る北への密入国で金日成と直接会う程に北朝鮮指導部の信頼を得ていた。しかしその後、北朝鮮体制が首領独裁体制であることを悟った後は公開的に転向を行い、北朝鮮人権運動に身を投じた。

30年近く北朝鮮体制内部を綿密に観察し、分析してきたという点で「ポスト金正日」体制の未来を最も内密に診断できる専門家として評価されている。

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著者は、「世界最悪の残忍な独裁者である金正日が死亡したが、彼が後継者に指名した三男・金正恩が独裁者としての地位を引き継ぎ、王朝が継続している。共産主義を掲げる国家で3代世襲のようなとんでもない行いをするのは実に恥ずべきことであるが、3代世襲はすでにかなりのレベルに進んでいる」と指摘した。

特に、「金正日が自身の死後へ備えて十分な準備を行い、自身が構築した体制が長く維持されるように二重・三重にも装置を整えておいたため、金正日が死亡したといってすぐに北朝鮮体制が揺らぐとは考えにくい。権力継承の過程の中に危険や策略が潜んでいるため、金正恩の権力継承は結局容易ではない」と予測した。

本書ではまず、金正日の死後、金正恩への権力移譲が順調に行なわれるかに関して論じている。また、今後北朝鮮の未来を導いて行く金正恩に対する人物探求や金正恩時代の北朝鮮が中国式の改革開放を選択できるかなどを予測している。この他にも北朝鮮の崩壊可能性や統一戦略についての意見も提示している。

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著者は金正恩に対して、「幼い時期は外国で過ごし、北朝鮮にいる時も一般人と徹底的に隔離される生活を送った。そのため、人民・幹部・幹部の子息らとの紐帯・連帯意識が極めて低い」とし、幹部らを掌握できるかという疑問を提起している。

また、金正恩の「指導者としての資質」についても疑問を提起している。「金正日は称賛と媚びの中でも幹部らの心を見抜き、扱う能力が優れていた。それは若い時より様々な方法で彼らと交感したためだ。金正恩にこのような教育を行うために努力を費やしてきただろうが、金正恩がこれをしっかりと学習したかどうかに関しては極めて疑わしい」と述べた。

続いて、「王子の身分である金正恩が外国で自由に生活し、突然北朝鮮のように硬直した社会で、しかも最も硬直したグループである軍将校らと交感することは極めて難しいことだ。その上、金正恩は警護やその他の問題のため軍将校らとの接触機会すらも多くはなかったと推測される」と述べた。

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著者は、「中国が金正恩後継を事実上受け入れ、北朝鮮内の幹部らの中でも反発する動きは観測されていなく、金正恩の後継体制にすぐさま浮上する目立った障害物はない。しかし、北朝鮮体制が各種の危機にもかかわらず金正日の卓越した権力掌握能力によって持ちこたえたという点で、金正日の死亡によって後継体制を含む北朝鮮体制そのものが致命的な危機へ向かう可能性が高い」と展望した。

北朝鮮体制の転換に関しては、「一部では北朝鮮が崩壊し混乱が生じれば韓国の経済や社会、安全保障に大きな負担を与えるとし、極めて消極的な態度で一貫しているが、これは民族愛的な観点で見ても人類愛的な観点で見ても正しくない。北朝鮮の民主化は遅かれ早かれ避けることのできないこと。避けられない道ならば、苦痛に陥っている北朝鮮同胞を可能な限り一日でも早く救出するのが私たちが追求せねばならない道だ」と強調した。

また本書では、ジャスミン革命や今後発生しうる中国の民主化の影響、中国脅威論、北朝鮮が中国の属国に転落する可能性、統一ドイツとの相関性など北朝鮮体制の変化をめぐる多様な国際的問題も扱っている。

今日、再び劇的な岐路に立つ朝鮮半島の姿は「主体派のゴッドファーザー」から「北朝鮮人権運動家」への劇的な転向をした著者の人生と大変似通っている。そのような面で「ポスト金正日」は、霧の中に包まれた不透明な北朝鮮の未来を見通すのに役立つだろう。