教育は無償のはずなのに登校できない北朝鮮の子供たち

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北朝鮮の中等教育の就学率は、2015年のUNESCOの統計では92.27%だ。統計によって数字が異なるため、正確な就学率を知るのは難しいが、この数字を見る限り概ねほとんどの子どもが学校に通えていることになる。

また、2012年には義務教育が従来の11年から幼稚園1年、小学校5年、初級中学校3年、高級中学校3年の12年に延長された。

だが、現実に学校に通えているかは、数字だけではわからない。極端なゼロコロナ政策がもたらした経済的困難により、多くの人が生活苦にあえぐ今の北朝鮮では、子どもを学校に通わせられない家が増えている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)白岩(ペガム)郡の教育関係者によると、今月1日に郡内の各幼稚園と学校で始業式が行われたが、1クラスに1〜2人ほど欠席者がいたという。ちなみに、北朝鮮の学校では30人学級が一般的だ。

出席率が悪ければ担任教師の責任とされるため、教師は足繁く家庭訪問を行い、子どもを学校に連れ出そうとする。それでも依然として学校に出てこない子どもたちが多い。

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情報筋によると、登校しない子どもらはいずれも貧困層で、農繁期に入り山の中にある畑の準備に忙しい親の手伝いをしなければならず、登校できていないという。

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北朝鮮で教育は無償とされているが、教科書や制服などは市場で買うことを余儀なくされる。様々な課題――宿題ではなく、金品を集めて供出することが求められる。経済的に余裕がなく、ドロップアウトしてしまう児童・生徒も少なくないと言われている。

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こうした現状を受け、郡人民委員会(郡庁)の教育部は強硬策に出た。

今月10日、子どもを登校させない親に「子どもを登校させよ、さもなくば勤め先の朝鮮労働党委員会に通報する」との通知を送った。過去の同様のケースでは、登校を促す内容の通知を行うだけだったのが、今では様々な不利益が生じると脅迫するようになっているわけだ。

4月は、全国の農場で稲の苗床作りや排水路の整備に忙しく、山の中に自分の畑を持っている人たちも、堆肥を担ぎ上げるなどの作業で忙しい。

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「田舎に住む人にはとって、個人の畑の農業は最も大切なこと。商売ができない家にとって、畑で取れるトウモロコシ、大豆、ジャガイモは唯一の食糧だ」(情報筋)

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、金策(キムチェク)市内の学校の出席率が悪いと伝えた。自分の子どもが通う初級中学校のクラスの場合、28人中4人が欠席したという。

いずれも商売や農業で忙しい家だ。担任教師が家を訪ねて親たちに登校させるように促しても、そんな余裕がないと言われるだけで、手の打ちようがないという。

市人民委員会(市役所)の教育部は先週、各学校から欠席が続いている児童、生徒の家の住所と両親の勤め先、肩書を記したリストを受け取った。これを元に、「なぜ登校させないのか」と追究するとのことだ。

しかし、勉強より餓死を免れることの方を優先しなければならない現状で、全員を出席させるのは困難だと情報筋は述べた。

このような問題は毎年繰り返されているが、根本にある貧困を解消する以外に改善の方法はないだろう。

(参考記事:北朝鮮の小・中・高校、出席率わずか5割…重い経済的負担に耐えられず