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北朝鮮で「1号」と名の付くものは、すべて最高指導者と関連している。例えば「1号行事」と言えば金正恩総書記が参加する行事であり、「1号道路」は金氏一家が利用する専用道路だ。

そして「1号接見者」は、最高指導者と直接会ったことのある人を指す。ここには例えば、指導者と言葉を交わしていなくとも、一緒に記念写真を撮った人も含まれる。記念写真は、数百人~1千人以上が一緒に撮ることも珍しくなく、指導者は多くの場合、個々の接見者について認識していない。それでもこうした行事への参加は、思想や成分(身分)が問題ないかなど、厳しい審査を通った者だけに許されている。

それだけに、1号接見者は社会的には尊敬される存在となり、様々な場面で特別待遇を受け、ほかの人々と比べて安定した生活が保証されていた。

だがそれも今は昔。1号接見者であっても、苦しい生活を強いられている。その現状を、江原道(カンウォンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

大規模な牧場や畜産工場がある洗浦(セポ)に住むAさんは、軍官(将校)として30年間にわたって服務し2014年に除隊した。その後、故金正日総書記と2回も会っている1号接見者だ。自宅には、その時の記念写真が飾られている。

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1号接見者となれば、本人はもちろん、子どもや孫まで様々な特典が与えられる。そのひとつに、大学に無条件で入学できるというものもある。皆がうらやまれる対象ではあったが、実際のところ、コロナ前にも生活に余裕があったわけではなあく、コロナ禍でさらに苦しい生活を強いられている。

俗世間とは切り離され、軍という特殊な空間で一生を過ごしてきた除隊軍官は、民間人のようなしぶとい生活力に欠けていることが少なくない。商行為に携わることを禁じられてきたため、商才が身につかず、生き馬の目を抜く市場で商売を始めたところで、勝ち抜くのは非常に困難なのだ。年明けすぐのころ、軍出身の1号接見者の一家が飢えのせいで倒れたこともあった。

(参考記事:「今にも餓死しそうだ」北朝鮮の元兵士らが集団抗議

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そして今年1月中旬、彼は行動に出た。

朝鮮労働党江原道(カンウォンド)委員会(道党)を直接訪ねて、「もう死にそうだ。食糧問題を解決してほしい」との建議書を提出したのだ。道党はこれを受け取り、党中央委員会(中央党)に報告を上げた。すると、2カ月後にこんな回答が返ってきたという。

「道党が責任を持って解決すべき食糧問題を、なぜ中央にまで送りつけたのか」

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そんな激しい批判とともに、「道党が直接、1号接見者の家族に食糧を配給せよ」との指示も下された。それから1カ月が経ったが、食糧が配給される気配はなく、除隊軍官の家族は相変わらず苦しい生活を強いられている。それを見た一般住民からはこんなリアクションが出た。

「1号接見者だからといって何だというのか。1号写真が壁に飾られていても何の意味があるのか」
「家族全員が倒れたとき、助けたのは人民班(町内会)で、国からはコメ1キロも配給されていない」

そんな声を聞いた情報筋は、「一生を軍に捧げたところで、飢えは免れない。1号接見者であっても同じだ。それを見た若者の間で軍に入ろうとしない現象が広がるだろう」と述べている。

(参考記事:北朝鮮「140万人の若者が軍入隊」の悲惨な舞台裏