韓国のNGO、北朝鮮人権情報センター(NKDB)の調査によると、北朝鮮国内には約700カ所の拘禁施設が存在する。教化所と呼ばれる一般的な刑務所は、わかっているだけで20カ所。暴力、拷問が横行し、環境は劣悪、受刑中に栄養失調や他の病気で死亡する者も少なくない。
北朝鮮の刑務所で服役している人々は、どんな罪を犯したのだろうか。
日本の場合、ある年の統計では、男性受刑者は窃盗が34.1%、覚せい剤取締法違反が24.4%を占め、女性では窃盗が47.5%、覚せい剤取締法違反が32.5%となっており、6割から8割がこの2つの罪状で受刑している。
北朝鮮は、正確な人数や比率は不明ながら、昨年最も多かったのが「不純録画物関連犯罪」、つまり韓流関連のものだった。これは、社会安全省(警察庁)教化局に配布された「教化入所者法条分類総合報告書」に書かれていたものだと、デイリーNK内部情報筋が明らかにした。
北朝鮮では2020年末に、反動思想文化排撃法が制定された。同法27条は、南朝鮮(韓国)の映画、録画物、編集物、図書、歌、絵、写真などを見たり聞いたり、流入、流布させた者は5年から15年の労働教化刑(懲役刑)に処すと定めている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市で韓流ドラマや映画などを視聴し、拡散させたとして摘発された高校生ら3人が、昨年10月に公開処刑されていたと報じた。また、一昨年11月には、同市の初級中学校に通っていた14歳の少女が、ウォン・ビン主演の韓国映画「アジョシ」を隠れて見始めてから、わずか5分後に逮捕。「見せしめ」のため14年もの労働教化刑という重い判決が下された。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
しかし、少年の90%が外部文化に接しているとの調査結果に基づき、未成年者が次々に教化所送りにされる現状はよろしくないとして、14歳以上17歳未満に関しては釈放を命じるなど、取り締まりが一部緩和されてもいる。
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それでも依然として、韓流に接した容疑で逮捕、収監される者が最も多いのだ。
(参考記事:北朝鮮の少年9割が韓流を視聴する中で取り締まり緩和)最近、採択された「平壌文化語保護法」は、韓国風の言葉遣いなどを取り締まる法律で、最高刑は懲役5年である。このように取り締まりを強化しても違反者は後を絶たない。
韓国風のライフスタイル、韓国式の考え方などが広まることは体制を揺るがしかねないと警戒されているが、その結果がこの異常事態だ。
(参考記事:「見せしめ怖い」北朝鮮の若者ら、金正恩の統制強化に緊張)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
韓流に次いで多いのは、中国キャリアの携帯電話を使った密輸で、それ以下は強盗、殺人、麻薬(覚せい剤含む)と続く。以前は多かった人身売買は、ゼロコロナ政策により国境が封鎖されたため、2021年から半減した。
今現在の教化所内の詳しい状況は不明だが、「妊婦でない以上は100%収監される」(情報筋)ことから、過剰収容の状態に陥っている可能性が考えられる。病気になっても医療的措置は受けられず、性暴力と暴行がはびこっている。戒護員(看守)や安全員(警察官)は、出所後の元受刑者の報復を恐れ、個人情報は一切秘密にしているという。
教化所で生き残り、その後に脱北した人も少なくないことから、しばらくすれば今年の状況がわかるかもしれない。一方、20万人が収容されていると言われる管理所(政治犯収容所)のうち、絶対に釈放が許されない「完全統制区域」の状況は、元収容者の証言が全くなく、深い闇に包まれている。