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北朝鮮には「便宜奉仕事業所」なる施設がある。理髪、美容、写真撮影、時計、鞄、電化製品の修理、印鑑の制作、服の仕立てなど、様々なサービスを提供する国営商店の一種だ。そこに勤める理髪師、カメラマンが「公式のタダ働き」を強いられ、不満が高まっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

南蒲(ナムポ)の情報筋は、市当局が、先月26日から今月1日まで開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第7回総会拡大会議での決定事項を貫徹するための集中経済扇動のために、便宜奉仕事業所に勤める理髪師、カメラマンを動員するよう指示した。

理髪や写真撮影と、経済計画の間にどのような関係があるのかわかりにくいところだが、市当局の指示は、芸術宣伝隊と共に5人の理髪師、3人のカメラマンが各企業所を回り、歌って踊って髪も切ってあげて写真も撮ってあげて、労働意欲を高めようというものだ。

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このような強制ボランティアに、当の理髪師とカメラマンは激しく反発している。特にカメラマンの場合、印画紙、インクなどを自主負担させられる。1日に10枚の写真を撮影して、現像すると1万北朝鮮ウォン(約160円)の負担となる。また、収入が途絶えてしまうことにも怒りをあらわにしている。

便宜奉仕事業所に所属している人は、一般の国営企業の従業員とは異なり、給料を受け取っていない。理髪師が便宜奉仕事業所で行う理髪の料金は高くとも2000北朝鮮ウォン(約32円)。理髪師やカメラマンにも経済計画に基づく計画(ノルマ)があるが、ノルマを超過達成した場合、その利益は自分のものとなる。

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地域や時期によって異なるが、南浦市のカメラマンの場合、1カ月に最高で8万北朝鮮ウォン(約1280円)を国に納めれば、ノルマを達成したものとみなされ、残りは自分の取り分となる。国営企業に属しながら個人の商売ができるとあって、北朝鮮では人気の職種だ。だが、強制ボランティアのせいで収入は減り、ノルマが達成できなくなるとして、強く反発しているのだ。

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咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)の情報筋によると、市当局が南浦同様に、理髪師とカメラマンを強制ボランティアに駆り出しているが、極めて厳しい反発に遭っている。企業所の幹部が「ノルマを減らす」となだめたものの効果はなく、「幹部だったら自分のカネで労働者の髪を切ってやれ、写真を撮ってやれ」などと反論し、現場に出ることを拒んでいる。

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北朝鮮当局は、地域の掃除から大々的な建設に至るまで、命令さえ下せば人をいくらでも動員できるという考えに染まりきっている。一方で、過去30年間、市場経済化していく社会で暮らしてきた一般国民は、人を働かせるなら人件費を支払うものと考えるようになっている。その考え方の乖離と、かつてはあったタダ働きの見返りが今では存在しないことが、激しい反発を呼んでいる。

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