北朝鮮軍人の横暴に憤った「トラック運転手」の自殺攻撃

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道を行き交う車両の数は決して多くない北朝鮮だが、交通事故の件数は相当な数に及ぶ。それには様々な理由が考えられる。

運転免許取得のハードルが高すぎることから、教育を受けずワイロで済ませてしまう人が多く、運転マナーなどあったものではない。また、道路事情が劣悪で、高速道路ですら大きな穴が空いていることがあり、主要幹線道路でも一部は未舗装だ。

北部山間地にある両江道(リャンガンド)では2018年3月、季節外れの大雨が降った後に道路が凍結したことで事故が多発、たった1日で300人もの死者を出す事態となった。

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両江道の西隣にある慈江道(チャガンド)の城干(ソンガン)で今月2日、トラックが崖から転落、6人が死亡する事故が起きた。これに対して、安全部(警察署)ではなく、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)総参謀部が緊急指示を出す異例の事態となった。詳細を、デイリーNKの軍内部情報筋が伝えた。

国境警備隊の軍官(将校)を養成する李斉順(リ・ジェスン)軍官学校の生徒たちは、昨年12月から始まった冬季訓練に参加していた。ちょうど城干で野外戦術訓練を行っていたとき、体調を崩した1人の生徒が気を失って倒れた。

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同じ班の生徒4人は、学校のある江界(カンゲ)に向かう九峰嶺(クボンリョン)の峠道を通りかかったトラックに手を振って停めようとした。このようなヒッチハイクは北朝鮮で一般的なことだが、トラックは停まろうとしなかった。

それに腹を立てた4人は、トラックの進路を妨害して運転席に乗り込み、ドライバーが血だらけになるまで暴力を振るい続けた。結局、5人を乗せることにしたドライバーだが、トラックは急に進路を変えて崖の方へと向かい、そのまま転落した。

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トラックが転落するのを見た通行人が携帯電話で慈江道安全局(県警本部)に通報。トラックに乗っていた6人全員が死亡したことを確認した。また、トラックは、軍需産業丹東の第2経済委員会所属で、生物・化学兵器を製造していると言われている城干11号工場(城干電線工場)のものであることが判明した。

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また目撃者の証言から、ドライバーは意図的にハンドルを切ったと見られるという。理不尽な暴力に耐えられず、加害者らを道連れに死を選んだのかもしれない。

安全局は、実況見分と目撃者の証言を元に事故の経緯に関する報告書を作成、朝鮮労働党の慈江道軍事委員会と、中央軍事委員会に提出した。報告を受けた中央軍事委員会は総参謀部に指示、事故は北朝鮮が重視する軍民関係(軍と民間人の良好な関係)を毀損する深刻な事案として、4日午前に全軍に緊急電信命令を出させた。

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その内容とは、野外戦術訓練期間中に、軍民関係の毀損問題が発生しないように特に注意することと、発生した事件・事故に関しては、現場の軍事指揮官、政治責任者、当事者への追及を行い、問題が深刻な場合には、労働連隊(軍刑務所)行きとするというものだ。

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一方、慈江道軍事委員会は「一般的に(軍事郵便を輸送する)機通手の要請があれば、民間人の運転手は車を停めるのが慣例だが、今回の事故で停車を要求したのは機通手ではなかった。そうでなくとも最初に病人がいると説明すれば乗せてくれたはずだ」として、李斉順軍官学校に生徒の教育をきちんと行うよう警告を発したという。

しかし、学校側と遺族はこれに不満を示し、ドライバーを責めている。