「ポツンと一軒家」に住んでいた北朝鮮一家の悲しい最期

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厳しい食糧難の中にある北朝鮮で、家を売払い山ごもりして暮らす人々が増えていることは、デイリーNKでも既報のとおりだ。

当局は、彼らが統制から外れることを嫌い、所在地の把握に乗り出しているが、山地の多い土地柄だけあって、すべてを把握することは不可能だろう。

(参考記事:山ごもりする世捨て人を統制下に置こうとする北朝鮮の「ご配慮」

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内でも内陸にある豊西(プンソ)郡の中心地から6キロ離れた山中で、40代のチェさん一家3人が遺体となって発見された。

コロナ禍で深刻な食糧不足に陥っていたチェさん一家は、生き抜くために家を売り払い、山に入って土地を開拓して生きていくことを決心した。その場所は、郡の中心地の住民らが薪を取りにやってくるところだ。このロケーションなら、やってきた人が薪や野菜を買ってくれて、現金収入が得られると踏んだのだろう。

今月8日、薪を取りに山に入った人が、飲み水をもらおうとチェさん一家の住む掘っ立て小屋を訪ねたところ、3人の遺体を発見し、安全部(警察署)に通報した。この人は取り調べに対して「小屋の戸が閉まっていて、中にはガスが充満していた」と述べたことから、一酸化炭素中毒による死亡事故と安全部は見ている。

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北朝鮮では、暖房用の燃料として石炭や薪が使われるが、一酸化炭素中毒で死亡する事故が後を絶たない。都市部や農村部では人民班(町内会)が見回りをして事故の発生を防いでいるが「ポツンと一軒家」であるチェさん宅には誰も訪れることなく、事故につながってしまった。

(参考記事:「焦げ臭い匂い取り締まり班」の活動を妨害する知人の犯罪

ただ、安全部は事件の可能性も排除しきれないと見て、捜査を続けている。北朝鮮では1990年代の大飢饉「苦難の行軍」に際しても、様々な犯罪が多発して治安が乱れた。

(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた

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今回の事故の報告を受けた朝鮮労働党両江道委員会の責任書記(トップ)は、山ごもりしている人を探し出して、元いた居住地に帰らせるよう指示を下した。しかし、山ごもりしている人々は「このまま山で作物を育てて住ませてくれ」と、山から降りることを拒否しているとのことだ。山から降りれば、生活がさらに苦しくなるからに他ならない。

「コロナ禍で家を売って山ごもりする人が増えた。彼らは職場や人民班の統制を受けるのを嫌がり、社会的負担から逃れ、食糧問題を自力で解決するために山ごもりを選んだのだ」(情報筋)

北朝鮮国民は全員が職場や人民班、学校、青年同盟など何らかの組織に属することが義務となっている。これを組織生活と言うが、そこを通じて様々な配給を受け取る見返りに、思想教育を受けたり勤労動員や金品の供出に応じたりせねばならない。

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そして配給が止まった今、組織生活を送るメリットはほとんどない。煩わしい統制を逃れ、自分たちだけの「楽園」を築いた方が、マシな暮らしができると思うまでになっているのだ。