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金正日政権が貨幣改革(デノミネーション:以下デノミ)を断行してから2年を迎えた。デノミは資本に対する住民意識を変化させ、政治・社会制度に対する不信を拡散させるきっかけとなった。

特に、市場化の普及に伴い住民の意識変化はより速くなっているのに対し、当局の政策に対する無関心が増加している。既存の社会的地位も、資本の影響力拡大で変化しつつある。指導部に対する不信はますます深刻になっている。

当初、金正日政権は、デノミで物価をコントロールし指導部の権威を高めると同時に、世襲の正当化の重要な手段として活用しようとした。また、2000年代以降から急増していた新興富裕層への警告の意味を伝え忠誠心を高めようとする意図が伺えた。

むしろ、市場を通じて「民心」を引っ張ってきた多数の中間商人層を一瞬にして没落させ、政権への不信だけが残った。

消息筋によると、住民たちは「貨幣交換後から、住民の思想が180度変わった」「ウォンでの取引がなくなるほどに体制を信じる事が出来ず、政府の施策への抵抗感が広まっている」「国家が何と言おうとも信じない」「市場が絶対的だ」という反応を見せている。

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◆資本がますます威力を発揮…新権力層も誕生

資本の威力を持続的に大きくなっている。一部地域では、両替商が町全体の事業を主導していると言われるほどだ。地域行政労働者よりも裕福な商人の社会的影響力が大きくなっている。

デノミ以前にも両替商や外貨稼ぎ機関の影響力は比較的に大きかったが、法労働者(人民保安部、国家安全保衛部、検察所など)の権力の前では無意味だった。

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しかし、ウォン価値の急落によって外貨を多く保有していた彼らの影響力が大幅に上昇した。金正日と党への忠誠資金を収める為には、既存の権力者が譲歩するしかなくなった。

消息筋らは「力のない(周りの権力を持った人がいない)人々は、子供が教化所に送られたり、保安署で逮捕された際には、外貨稼ぎ単位の責任者や両替商に助けを求めている」と伝えた。これに対して脱北者は「新たな権力層が生まれた」と答えている。

8月に咸鏡北道などの国境地域で行われた暴風軍団の非社会主義検閲の際にも、新富裕層は取り締まりを避けることが出来た。

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資本の影響力は学校にも拡大している。平安道の消息筋は「以前なら幹部の子共たちが学校で中心的な役割を果たしたが、最近では新富裕層の子共たちが中心的な役割を引き受けている」と述べた。

◆幹部の生活様式にも影響…指導部に対する不満の吐露も

デノミ、は末端幹部の生活にも影響を及ぼした。それ以前より、幹部の規律の乱れがある程度見受けられたが、法秩序を守ろうとする雰囲気もあった。しかし、今では商人と公開的に協力する雰囲気が広がっている。

消息筋は「体制防衛を担当する保衛員も、脱北者家族の外部との電話の使用を目をつぶり、その代わりに金を要求している。保安員も密輸を黙認・支援している」と話した。

果てには、重要幹部が政府施策に対して苦情を吐露したりもする。わざと取締りを避けようとする傾向も高まった。

平壌の消息筋は「市場の規制を行う検閲担当者も、韓国の商品を売る商人に『目立たない様にラベルを取ってから売るように』と指導する。また、『政権を握っている人々の無責任さがこの様な結果を生んでいる』とも話している」と伝えた。

◆若年層、軍・党への関心下落…金正恩への不満広がる

また、デノミの余波は若年層の志向も変化させている。以前は、先軍政治の影響で身分上昇のために「軍入隊後の党入党」を希望したが、現在では商売を希望する若者が大幅に増えた。

朝鮮人民軍入隊後に軍の政治大学を卒業し軍官(将校)となるまでに約10年、この期間に密輸や商売に手を出してまとまったお金を手にしようとする若者が増えているという。

咸鏡北道の消息筋は「党に忠誠を果たしていた人々も、デノミ後からは経済的な上昇のために入党や入隊を拒否する傾向にある。多くの人が金さえあれば何でも解決できるのに、何のために幹部や党員になるのかと考えている」と伝えた。

また、政権への不満が政治への無関心につながっている。特に、社会主義制度そのものを不信する様相を見せている。

両江道の消息筋は「デノミで、将軍様と金正恩大将同志に対する忠誠にヒビが入った。以前は、指示や方針を無条件に貫徹しなければならないと思っていた人々が『私達が貧しく苦労しているのは、デノミを行った政権のせいだ』と批判している」と伝えた。

朝鮮中央TVや有線ラジオ放送の第3放送の電源を切るケースもあるという。これも政権への不信と無関心の拡散の証拠として解釈することができる。