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北朝鮮の結婚は、貧富の差が激しくなるにつれ両極化しつつある。一般庶民は、新郎の実家、新婦の実家の2回に分けて披露宴を行い、客を食事でもてなすという「ジミ婚」だ。新婚旅行に行こうとも、市や郡の境界線を越えての移動は旅行証(国内用パスポート)が必要なために行けず、太陽像(金日成主席の銅像)や名所旧跡の前で記念写真を取るのが関の山。

一方で、幹部やトンジュ(金主、ニューリッチ)などはホテルやレストランの宴会場を借りて、多くの客を招待、豪華な食事を提供し、ダンサーを雇ってショーを披露することもある。

現在のコロナ鎖国下では、ジミ婚がますます地味になりつつあるという。コロナ禍での北朝鮮の結婚文化の変化について、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)の情報筋は、金正淑(キムジョンスク)郡の邑(中心地)にある太陽像の前で、結婚写真を撮る若い新婚夫婦が増えていると伝えた。10月の第4日曜日は、陰暦で0か9で終わる「ソン(邪神)のいない日」(編集部注:厳密にはその翌日)だったため、結婚式を挙げた新婚夫婦が多かったのだ。

通常なら、人民班(町内会)の人々を招いて披露宴を開くところだが、それを行った新婚夫婦はいなかったという。国境封鎖と貿易停止による深刻な経済難、そして食糧難により、結納品を贈る習慣が消えつつあったが、さらには披露宴までなくなってしまったのだという。

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肉、酒、果物、餅、お菓子など、食事を用意するには少なくとも30万北朝鮮ウォン(約5400円)もの費用がかかる。これは現地の市場でトウモロコシ1トンに相当する金額だ。また、朝鮮服(韓服)の購入もできなくなり、1時間3000北朝鮮ウォン(約54円)でレンタルするという。

結婚写真は、派手なものにする傾向にあったが、経済難に加えて当局による風紀取り締まりの影響で、無難なものになりつつあるようだ。

(参考記事:ワイロ要求のネタに転落した金正恩の「反社会主義」取り締まり

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、秋の収穫を終えて穀物など物価が下がり、涼しくなる今の季節が結婚に適した時期だとしつつも、今年は物価が下がっていないと現地の状況を伝えた。

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安州(アンジュ)の市場では、今月25日の時点で、コメが5600北朝鮮ウォン(約95円)、トウモロコシが2300北朝鮮ウォン(約41円、いずれも1キロの価格)。穀倉地帯にある安州は、他に比べて穀物の価格が幾分安いが、下落傾向にない。

今年8月からはコロナ対策が緩和され、自宅での結婚式、トルジャンチ(1歳のお祝い)が許されるようになったが、実際にやる人はほとんどいない。いや、できないのだ。

新郎新婦の両家は相談して、費用のかかる披露宴をやらずに、記念撮影だけで済ませるのだという。

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それでも結婚できるだけまだマシかもしれない。経済、社会が不安定な中、結婚をしない選択を迫られる人も少なくないからだ。

(参考記事:北朝鮮でも深刻な若者の晩婚化と非婚化、そして少子化