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-他にも自殺をした人はいますか?

-誰かが自殺しても、それを口に出させないようにしている。良い事でもないから。国家に関する事情で自殺をすると逆賊扱いされるので、家族に被害が及んでしまう。なのでそういう場合は病気で死んだということにする。

-餓死した人を見たことはありますか?

-人は忙しいと他人に高チていられないものだ。みんなそうだ。それで道端で老人が死んでしまうということが起こる。建物の廊下にうずくまっていて凍死してしまうこともある。商売が上手く行かず餓え死にした人もいた。(2009年11月)貨幣改革以前の状況はそうだった。貨幣改革以降は誰もが大きな衝撃を受けた。

-貨幣改革後が苦難の行軍よりも辛かったという人達もいますが。

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-突然衝撃が襲ってきた。私達は国家を全面的に信じたというのに。今度こそは全てが解決されると言っていた。今度こそは良い暮らしが出来ると思った。私達の望みは、トウモロコシのご飯でもいいからお腹いっぱい食べること、ただそれだけだ。商品が流通され、1人当たり500ウォンをタダでくれると言っていた。10万ウォンが1000ウォンになった。それでも換金したお金が大きなお金だと始めは思った。

-貨幣改革の直後はよかったのですね。

-気分はよかった。でも、目の前に商品が沢山ある訳でもなく生活が改善された訳でもなかったので、このお金を上手く使わなければと思った。こうして希望を抱くようになったが、数日後から状況がおかしくなり始めた。人々は他人の顔色を伺いながら物を出さなかったし、都市では物価が跳ね上がりはじめた。農場員たちも、何かを売らなければ流通が成立しないのに、猜疑心のためか安い価格では物を売らなかった。その後は価格が跳ね上がり、つけた値段がそのまま価格になった。国家が安く流通させた物もなかった。結局市場で取り引きも出来ず、個人同士で決め合った値段が価格になった。

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-貨幣改革後、国家はなんと言っていましたか?

-すぐに国家が物を流通させるから、お金をやたらに使わないで大切にしろと言っていた。それで私もお金をぎゅっと握りしめていた。人民班でも会議を開いた。やはりもうすぐ商品が流通するからお金を使うなと言われた。工場や炭鉱でも全く同じことを言っていたそうだ。それ以降、どんな物が入ってくるか毎朝商店に行って確認したが、何も入ってこなかった。時々油などが入ってきたが、市場と価格が同じだった。結局国家に騙されたということだ。お金を全て国家に奪われたじゃないか。血のような個人財産を、どうすればこんな方法で奪うことが出来るのだろう。眠ることが出来なかった。皆怒りが収まらず悪口も言っていた。その時は安全員(警察のこと。現在は保安員)達が私達を見張っていた。(貨幣改革のショックのせいで)最近の人達は目に見えるものしか信じない。これ以上国家を信じることは出来ない。強盛大国か何かが来るといって人々が希望を持っているが、結局はダメだ。全て分かっているが、無駄に期待している。

-国家は強盛大国がやってくると宣伝し続けていますが、北朝鮮にいる時はどう思っていましたか?

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-貨幣改革以前は信じていた。貨幣改革以降事がこうなると、幹部達が出てきて講演会等の場で「強盛大国の扉が開く音が聞こえる」と言っていた。人々は信じず作り笑いをしている。毎日「強盛大国が平城までやって来た。清津までやって来た」「強盛大国が扉のところまで来ている」と言うが、人々は笑っている。貨幣改革が終わった後、国家が「星(ピョル)の生まれる我が国」という歌を教えてくれたのだが、人々は「災い(ピョン)の生まれる我が国」と言っている。

(夫人がこの歌を歌ってくれた。以下歌詞)
聞こえてくる 聞こえてくる 千軍勝馬が稲妻と共に走ってくる音が
愉快だ 愉快だ 主体鉄が吹きすさぶ音
なんて素晴らしのだろう 将軍様の強行軍 天地開闢 星が生まれる 大革新の音だ
あぁ 歌おう あぁ 誇ろう
白頭霊長 先軍の星が 星が(ここを「災い」に替える)生まれる 我が国

-金正恩についての評価はどうですか?

-2年前くらいからだろうか。4.15の時に子供達が歌を歌った。大きい子供が歌った歌があったのだが、それが始まりだった。この歌を聞いて金正恩が後継者だということが分かった。北朝鮮当局側が後継者のための歌だということを知らせてくれたのですぐにわかった。昨年、金正恩研究室(金正日一家の革命歴史及び史跡を研究する場所)を設立すると言っていたのを聞いた。1月8日が金正恩同志の誕生日だからと、党から公演を行なえとのお達しがあったが、結局上からやるなとの命令が降りたので、ある場所では公演を行い、ある場所では行わなかった。

-貨幣改革は金正恩が主導したという話は聞きましたか?

-そんな話は全く知らなかった。聞いたことがない。ただ姿も風貌も人柄も、金日成そっくりだという宣伝を見たことがある。労働者達を見守り助ける姿がそっくりだと書いてあった。

-金正恩が初めて姿を見せた時の反応は良かったですか?

-別に反応はなかった。上が「あ」と言えば「あ」と言うのが私達だ。そういう教育をずっと受けているから。

-金正日、金正恩についての隠語はありますか?

-そういうのは口にすることが出来ない。人が沢山いるから。そういうことを口にするとどんな目にあうか分からない。将軍様が天(千)才なら、金正恩同志は万才だという話を聞いたことはある。(朝鮮語で天才の「天」と数字の「千」が同じ音)

-金正日の悪口が書かれているのを見たことはありますか?

-見たことはない。

-金正恩に兄が2人いるという事実は知っていますか?

-知らない。

-韓国から支援米が来たことは知っていますか?

-肥料が沢山来たことは知っている。新しく入ってきた肥料に大韓民国と書いてあった。肥料が入った麻袋に書いてあったので分かった。大韓民国と書かれた米をもらったことはない。大韓民国と書かれた麻袋は見かけるから、何かくれてはいるんだなと思っていた。麻袋を見たことはあるが米をもらったことはない。

-アメリカが経済封鎖を行なったため、国際市場にも出ることも出来ず、国連もこれを阻止したが、90年代に入ってから公開的に国連から援助を受け始めた。私達はこのことを金正日の知略によって食糧を誘致したのだと教わった。「将軍様の知略のおかげで(食糧が)入ってくる」と習った。チョン・ジュヨン(韓国現代グループの会長)が牛を連れて北朝鮮に来たという話は聞いたが、そこから口蹄疫が広がったと奄ノなった。北朝鮮には口蹄疫がなかったが、チョン・ジュヨンが送った牛のせいで北朝鮮の豚や牛が口蹄疫にかかったと言っていた。当時は韓国の人はひどいことをするもんだと思っていた。

-韓国についてどう思いますか?

-(女)私達はみんな韓国の経済力が発展したということを知っている。北は軍隊が強いし、南は経済が強いので、統一したら朝鮮民族は何不自由なく暮らせると思う。中国と北朝鮮を比較しても、私達は遅れている。家では蛍火のような明かりで生活をしている。

-(男)思想教育を沢山受けた。北朝鮮には山と資源が多い。今は国が分断されているし、昔外国からの侵略を受けたこともあるので、軍事面を強化しなければならないと教わった。なので軍事力を強化している。我が国は一人で世界最強国のアメリカと戦っているので、一時たりとも軍事力の強化を遅くすることは出来ない、韓国から外敵を追い出せば私達は一緒に暮らすことが出来ると教わった。

-北朝鮮に一番必要な物は何ですか?

-食べ物が必要だ。白い米など望まない。トウモロコシのご飯でもいいので沢山食べたい。中々買えないから。

-住民達のこうした不満が募れば、それを集団的に表現することができると思いますか?

-できない。暮らしだけで精一杯だ。家に帰るといつも「はあ」とため息をつきながら、早く戦争でも起こってしまえと言っている。戦争が起これば確実に我々が勝つだろうとも思っている。また、私達の暮らしが大変なのは将軍様のせいではなく、間で何か不正が行われているのだろうと考える人が多い。末端・中間幹部がきちんと仕事をしないせいで私達の暮らしが大変なのだと思っている。

-戦争でも起こってしまえというのは、戦争をすれば勝つと思うからそう言うのですか?

-そうではない。私はただ、統一されれば勝ち負けを超えて…ただ今の生活があまりにもきついので、ばっと戦争でも起こればこの生活は終わるだろうと思うだけだ。勝つからというわけではなく、この生活が終わることを望む気持ちからそういうことを言うのだ。生活がよくなるだろうとの期待感もないし、死ぬとしても生き残るとしても、戦争が起これば何かが終わるのではないだろうか。ただそれだけだ。

-麻薬を吸う人が増えたと聞きましたが。

-(女)吸っている人もいる。子供達はやっていないようだが。まわりの大人達がヒロポンを吸っている。こそこそとやっている。幹部達も麻薬を吸っている。

-(男)ヒロポンは知っているが、吸うことより売ることの方が多いはずだ。私に向かってヒロポンを買えという人もいたが、私はそんなものに関心がなかった。ひどい目にあうかもしれないので避けた。

-まわりの人達を信用するのは難しいですか?

-当然だ。その人がどんな人なのかを知ることが出来ない。そういう訓練もする。ヒロポンを売る人の格好をして私達に近づいてくる。そういう人達を家に泊めたり、ヒロポンに興味を示したりすると大ごとになる。そういう人達は偽装して近寄ってくる。申告しないと捕まえられる。

-お二方はどうやって出会ったのですか?

-(女)姉の夫が、夫と同じところで働いていてお見合いをすることになった。

-若い人達は沢山恋愛しますか?

-(男)農村なのでまだ雪が沢山降る。私達は恋愛についてあまり考えない。隠れてしてはいるだろう。恥ずかしいので風ァって恋愛することは出来ない。時々目が合って恋に落ちることもあるが、人目につかないようにしている。どうやって出会うのかは分からない。

-(女)出会いが欲しくても、車がないので、他の場所で出会うこともない。同じ地域で出会って適当に家の中で会っているんだろう。最近は建設現場で出会って恋愛する場合も多いらしいが、昔はそんなことはなかった。

-中国で暮らしていていいことは何ですか?

-お腹いっぱい食べられることだ。子供達が喜んでいる。子供達に北に帰ろうと言うと嫌がる。お腹いっぱい食べることが出来ないから。今はお腹いっぱい食べているおかげか、子供達は遊びたがるし勉強もしたがる。そしてここでは働いた分報酬が出る。働いた分だけくれる。そのお金でいくらでも生活することが出来る。お金が多い訳ではないが、それでも大丈夫だ。

-中国での滞在が長くなると、このまま一生帰れなくなるかもしれません。ふるさとが恋しいと思うことはありますか?

-(女)両親が恋しい。私達がお腹いっぱい食べているように、両親もお腹いっぱい食べられればいいと思う。それが私の心残りだ。ここまで来るために川を渡るとき、死を覚悟した。それで連れてこれなかった。母に会いたい。