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北朝鮮の国営メディアは、毎日のように「人民経済の複数の部門で達成された成果」という記事を配信している。その内容はというと、大抵が次のようなものだ。

地方産業工場の生産活性化の実現に力を集中

【平壌7月22日発朝鮮中央通信】各道で、地方産業工場の生産活性化のための活動に拍車をかけている。
新しい工場の建設と近代的な生産工程の新設、設備の改造など、さまざまな活動が推し進められている。

咸鏡北道では、地方産業工場に多くの生産工程を新たに設け、百数十台の設備を製作および改造した。

平安北道では、洗濯石けんを生産する全ての工場に苛性ソーダ生産工程を設けるための活動を進める一方、新義州市戦傷栄誉軍人チャンウォン樹脂日用品工場の消費財生産土台の強化に大きな力を入れている。

市・郡の複数の工場でも、製品の品種を増やし、質を高めるための活動が行われている。
(以下略)

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金正恩総書記が、去年1月の朝鮮労働党第8回大会で打ち出した国家経済発展5カ年計画が次から次へと達成されているということだが、具体的な数値が示されない場合がほとんどで、実際の進み具合は、記事を読むだけではさっぱりわからない。

朝鮮労働党の平安南道(ピョンアンナムド)委員会は最近、今年上半期の経済計画の遂行状況に関する総和(総括)を行ったが、そこでは記事より詳しい内容が明かされたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

道内のすべての企業所を対象にして、部門ごとに経済目標の達成具合を調査したところ、全体で5割に満たない状況だったという。中でも電力、石炭、機械、食品生産の各部門の生産率が、期待よりはるかに低調だったことが判明した。

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その原因として挙げられたのは、資材や原料の不足だ。北朝鮮は2020年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために、国境を封鎖し、貿易を停止させた。農業、工業共に、国内生産分だけでは需要を満たせず、輸入に頼ってきた北朝鮮経済の構造上、貿易停止は自ら首を締める行為に他ならないが、それが改めて示されたわけだ。

(参考記事:「いつもの原因」でノルマが半分しか達成できなかった北朝鮮炭鉱

その後、輸入は再開されたものの、コロナ前の水準を回復するには至っておらず、国内では深刻なモノ不足が続いている。

しかし、朝鮮労働党平安南道委員会の指摘した計画未達成の原因は、なんと「忠誠心の不足」というものだ。ある高位幹部は「企業所イルクン(幹部)たちの、党に対する忠誠心を高め、党から下された目標を無条件で遂行しなければならない」と述べたが、実質的な代案を示すことはなかったという。

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総和に参加した人たちは「こんな虚しい会議を何のためにやるのか」と不満を漏らしたとのことだ。

代案が示せずにいるのは、政府とて同じだ。朝鮮中央通信は、金徳訓(キム・ドックン)内閣総理の指導の下、内閣全員会議拡大会議が14日に開かれたと報じたが、記事を読む限り、具体的に何をすべきかは示されなかったようだ。以下、記事より一部抜粋する。

「報告では、上半期の経済活動で現れた欠点と偏向、原因と教訓が分析されたし、活動家が党総会の決定に対する無条件的な実行精神をもって経済活動を先を見通して策定し、手配して行うことについて強調された。」

「主要工業部門で現行の生産と整備補強活動を同時に推し進めて下半期の人民経済計画を完遂する問題、経済管理システムと方法を現実的条件に合わせていっそう改善し、国家の統一的な指揮システムを補強するための決定的な対策を講じる問題などが会議で討議された。」

(参考記事:「自力更生」が生産量を押し下げる北朝鮮の生産現場