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中国国境に接する北朝鮮の地域では、チャイナテレコムなどの中国キャリアの携帯電話を使って、外部とやり取りをするのが当たり前のように行われていた。合法であれ違法であれ、貿易をするには欠かせないからだ。

地元の保衛部(秘密警察)は、そのユーザーから定期的に儲けの一部を上納させるなどして、貴重な収入源とし、また、平壌への上納金としても使われていた。その過程で、北朝鮮の国内情報が流出し、海外の情報が北朝鮮に流入し、それを重く見た金正恩総書記は、何度も取り締まるよう命令を出していたのだが、強固な利権構造を壊すことはできずにいた。

(参考記事:携帯電話の「定額サービス」を始めた北朝鮮の秘密警察

だが、一昨年12月の最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で「反動的思想・文化排撃法」が採択され、地元のしがらみから自由な中央の反社会主義・非社会主義連合指揮部(82連合指揮部)が各地に派遣され、取り締まりが強化。逮捕され、教化所(刑務所)や管理所(政治犯収容所)送りにされる人が相次いだ。

(参考記事:「韓国と1回通話するごとに懲役3年」北朝鮮で新たな統制

ところが、同様の容疑で勾留されていた人が今月2日、釈放されたと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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咸鏡北道保衛局は、故金日成主席の命日(7月8日)を控え、(朝鮮労働)党の寛大な政策として釈放したとその理由を説明し、罪を犯しても自首して反省すれば、党の寛大さにより誰でも許しを得られると、自首を奨励する呼びかけを行った。

釈放や赦免、「寛大さ」を強調する宣伝はセットで行われるのが基本で、法に基づく統治ではなく、徳の高い最高指導者による統治という徳治主義で動いている北朝鮮らしい。

だが、釈放の真の理由は、どうやら少し違うようだ。

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通常、違法な携帯電話の所有・使用が露見した場合、保衛部にスパイ容疑で逮捕され、取り調べを受ける。スパイ行為が立証されなければ、安全部(警察署)に身柄を引き渡され、労働鍛錬隊(軽犯罪者を収監する刑務所)に送られたり、教養処理(厳重注意)にされたりする。場合によっては、見せしめとして重罰に処されることもある。

ただ今回のケースでは安全部に送られず、いきなり保衛部により釈放されたため、現地住民の耳目を集めた。情報筋は背景を説明する。

「今回釈放された人々は、トンジュ(金主、新興富裕層)で、保衛部の上層部と結託している人々だ。彼らをスパイ扱いして処罰すれば、上層部にまで累が及びかねない。(末端では)事実上、手に負えないので、忖度して事件を終結させて釈放したようだ」

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この「上層部」が、具体的にどれくらいのレベルの人物かは不明だ。だが、勾留していたのが咸鏡北道保衛局であることから、おそらく局長クラスで、上述のように密輸などを幇助または直接関与することで利益を得ていたのだろう。

自分たちも管理所行きになるかもしれないと考えていたであろう、逮捕者の家族はもちろんのこと、関係のある人々まで非常に喜んでいるとのことだ。やはり、北朝鮮で生き抜くには、カネとコネが欠かせない。

(参考記事:数百円で量刑を3分の1にできる北朝鮮の司法制度