「上層部に裏切られた」北朝鮮“たたき上げ”軍人の恨み節

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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)には、「直抜軍官」と呼ばれる人々がいる。軍官学校(士官学校)を卒業して軍官(将校)になったのではなく、一般の兵士から昇進した叩き上げの人々だ。

日本に例えて言うならば、国家公務員のキャリアとノンキャリア。両者間には待遇に差があるが、朝鮮人民軍も同様のようだ。

南浦(ナムポ)のデイリーNK内部情報筋によると、現地に駐屯する第3軍団に所属する軍官30人に除隊命令が下された。そのいずれも直抜軍官だ。これは、朝鮮労働党中央軍事委員会第8期第3回拡大会議での決定に基づくこととのことだ。

情報筋は、具体的な指示の内容には触れていないが、今後も軍官の除隊が予定されているとして、技術や能力が足りない者が対象になると述べた。

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除隊命令を受けた軍官たちの反応は様々だ。「必要なときは利用して、今になって捨て去るなんて」「上層部の決定に裏切られた感じがする」と反発する者もいる。

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黄海南道(ファンヘナムド)安岳(アナク)出身の軍官は「都会の女性と結婚して、農村を脱出しようとしていたのに、未来の計画が崩れてしまった。今の世の中、誰が農村へ嫁に行こうとするのか」と強い不満を述べた。

実は彼には結婚を約束していた女性がいたのだが、今回の件で別れ話を切り出され、非常に動揺しているという。

北朝鮮には都市戸籍と農村戸籍が存在し、自由に行き来することはできず、農民は一生貧しい農村に縛り付けられる。都市戸籍を持った人と結婚することは、農村を抜け出して、豊かでビジネスチャンスの転がっている都会に移住する数少ない合法的な手段だ。彼はそんな未来を思い描いていたのだが、軍をクビになったことで、貧しい農村に戻ることになってしまったのだ。

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一方、平安北道(ピョンアンブクト)出身のある軍官は、「どうせ直抜軍官だから、副中隊長より上には昇進できないのは明らか。早期に除隊するのは悪いことばかりではない。一日も早く故郷へ帰り社会生活ができるようになったのは、むしろ幸いだ」と語った。情報筋は言及していないが、彼は都会出身であることが読み取れる。

軍官は、かつては誰もが羨む存在で、国の手厚い福祉の恩恵を受けてそれなりに豊かな生活ができたのだが、それも今は昔だ。下級軍官の場合、月給は一般労働者と変わらない3000北朝鮮ウォン(約60円)前後。食糧配給もまともに得られず、商業活動が禁じられているため、極貧生活を余儀なくされるケースもある。

それならば、軍人をやめて都会へ戻り、商売をしたほうがよほど有利というわけだ。

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ちなみに、今回除隊する軍官に対しては、「除隊軍官生活条件保障法」に基づいて生活環境を整えてやるようにと、金正恩総書記が方針を下したとのことだが、除隊軍官は冷遇される事例が多いことから、さほど期待はできないだろう。

また、曲がりなりにも国の保護を受けて暮らしてきた軍官とその家族が、生き馬の目を抜くような厳しい競争社会で生き残っていくのは、そう簡単なことではないだろう。ましてや社会は今、未曽有の経済難の中にある。待ち構えている暗い未来に、いずれもため息を付いているとのことだ。

(参考記事:北朝鮮「軍将校30年生活」の末の暗転…金正恩体制に反発