中東のジャスミン革命は長期独裁者が相次いで権力の座から引きずり下ろした。
北朝鮮で中東や北アフリカのような市民革命が発生した場合、金正日はどのような選択をするだろうか。
現状では、北朝鮮で自発的な民衆蜂起が起こる可能性は非常に低いが、3代世襲によって政権への住民の不満が高まっており、小さな火種が全国的な抵抗に広がる可能性も排除できない。
絶対的な権力を欲しいままにした人々も常に終わりはあった。シンプルだが逆らう事が出来ない真理である。民衆蜂起の前に屈服した独裁者たちの選択を見ると、金正日の未来も予測する事が出来る。
自発的な権力移譲と海外亡命の可能性
ジャスミン革命の震源地のチュニジアやエジプトなどでは、比較的に平和に権力委譲が行われた。独裁者が自発的に権力を移譲し海外への亡命を行ったり、法の裁きを受けた。チュニジアのベンアリ大統領は家族と共にサウジアラビアに逃亡した。
30年の長期政権を握っていたエジプトのムバラクもデモ隊に屈し、権力を軍事評議会に委譲した。ムバラク大統領は病に伏せた状況で裁判を受けている。イスラム圏で国民によって国家指導者が法廷に立たされたのは史上初めてのことで、ムバラク大統領は屈辱的な時間を過ごしている。
33年間の独裁を貫いたイエメンのサレハ大統領は、大統領官邸で発生した爆弾事による負傷の治療を行うためにサウジアラビアに向かった後、帰国していない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮で大規模な民衆蜂起が発生した場合、金正日は自分の間違いを認め、他の勢力に権力を移譲することができるだろうか。大多数の専門家は、金正日・金正恩が平和的に権力を差し出す可能性は極めて低いとみている。
キム・ヨンファン北朝鮮民主化ネットワーク研究委員は、デイリーNKとの通話で「権力欲の強い金正日が権力を移譲する可能性はゼロに近い。カダフィ大佐よりも悲惨で大規模な流血鎮圧を行うだろう」と話した。
同研究委員は、金正日が亡命を選択する可能性も低いとし、「亡命をするなら中国になる可能性が高い」と予想した。しかし、中国は国際世論を考慮し、亡命を受け入れ難いと付け加えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面チェ・ジンウク統一研究院専任研究委員は「(金正日は)中国や旧ソ連の衛星国であるウズベキスタン、カザフスタンなどを選択する事が出来る。海外に亡命したとしても、既に死んだも同然で何の意味もない」と説明した。
脱出中にデモ隊に捕まる可能性
ルーマニアの独裁者チャウシェスクの場合、デモ隊の蜂起後の脱出中に捉えられ悲惨な最後を迎えた。
東欧諸国が相次いで崩壊した1989年、北朝鮮体制にも肩を並べる程の支配体制に怒った市民らは、反政府デモを繰り広げた。これにチャウシェスクは装甲車部隊を動員してデモ隊を無差別に虐殺して鎮圧した。デモをある程度鎮静させ自信を持ったチャウシェスクは広場に人々を集めて、自身を支持する集会を開くようにした。
しかし、生放送で行われた集会の途中に一部の群衆の抗議が始まり、チャウシェスクは再び軍隊を動員して流血鎮圧を試みた。これに怒ったルーマニア国民は全国的な規模の蜂起を起こし、軍隊ですら市民側に結集し、反政府デモ隊の勢力が増して行った。
危機に追い込まれたチャウシェスクは、夫人と共にヘリコプターで海外への亡命を試みたが、操縦者の裏切りによって脱出からわずか3日後に逮捕された。チャウシェスク夫妻は軍事裁判で殺人国家反逆などの容疑で死刑判決を受け、即決処刑された。
この当時、チャウシェスクが市民軍によって処刑されたという消息が伝わると、金正日は大きな衝撃を受けたという。
金正日は、1990年初頭にチャウシェスクが死亡した際の映像を高位官僚らに見せながら、「我々も人民に殺される可能性がある」という言葉を繰り返して述べたという。国家安全保衛部に勤務していた脱北者は、「チャウシェスクが処刑された当時、事件の顛末を伝え、思想活動を行った」と話した。
軍部掌握の重要性を誰よりも知っている金正日は、チャウシェスクと同じ轍を踏まないために軍部統制に力を注いでいる。
高位層であればあるほどより徹底的に監視し、第一線部隊には部隊長と政治委員の相互監視、保衛司令部の監視、通報科を通じ主要指揮官の業績報告を受けてきた。反体制行動が検出されると、即座に厳しい罰を加えた。これらの統制と同時に特別供給の確保、高級マンションや病院の提供、プレゼントを通じた懐柔策を併用している。
?最後まで抵抗し、最後迎える可能性
2006年12月、イラクのフセインは米軍に最後まで抵抗し、故郷ティクリートの地下壕で逮捕された。カダフィは故郷のシルテの下水溝で発見・射殺された。全ての権力を手にしていたカダフィの最後の発言は、「撃つな、撃たないでくれ」だった。
自発的な権力移譲や海外亡命が選択しがたい状況で、金正日が選択できるのはフセインやカダフィのように最後まで抵抗することだけだ。この様な選択は民衆蜂起が内戦に発展する可能性が高いため、大規模な犠牲は避けられない。
キム研究委員は「金正日がカダフィと違い、情勢が不利だと判断すれば亡命する可能性も排除できない。しかし、最後まで市民軍を鎮圧し、抵抗するだろう」と述べた。
チェ研究委員は「ビンラディン、カダフィがそうであったように、以前とは違って行く(亡命する)場所がない。最後まで抵抗し最後を迎えることになるだろう」と予想した。