北朝鮮の金正恩総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は4日、「南朝鮮(韓国)は主敵ではない」としながらも、韓国側が軍事的対決を選択した場合には核兵器の使用をためらわないとする談話を出した。
これに対し、北朝鮮国民の間で反発する声が出ていると、デイリーNKの現地情報筋が伝えている。
両江道(リャンガンド)の情報筋によれば、朝鮮労働党機関紙である労働新聞に掲載された談話を見た住民たちは、「戦争など数十年にわたる口先だけの脅しだ」などと、批判の言葉を口にしているという。
金与正氏は2020年、脱北者団体のビラ散布問題で南北関係が緊張した際、南北共同連絡事務所の爆破を主導。それ以来、北朝鮮の「コワモテ」を担当してきたが、庶民には必ずしも通じていないようだ。
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人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国では徐旭(ソ・ウク)国防相が1日、陸軍ミサイル戦略司令部の改編式の席上、「(北朝鮮の)ミサイル発射兆候が明確である場合は発射点と指揮・支援施設を打撃できる」と発言。金与正氏はこれを「先制攻撃」に言及したものとみなし、2日付の談話でも「狂っている」などとして激しく反発した。
北朝鮮当局は、これらの談話を労働新聞にも掲載し、広く国民の敵愾心を呼び起こそうとしたのかもしれないが、どうやら逆効果だったようだ。
情報筋は「談話の内容を見て敵愾心を燃やす人は、私の職場や人民班(町内会)にはいない」としながら、「人々は『核戦争が起きたら我々も皆死んでしまうじゃないか』と舌打ちしている」と伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また市場の商人たちの間では「苦難の行軍を繰り返しながら、強く栄えた国を作るというから国家の言う通りに従ってきたのに、ここへきて核戦争をするなどと言っている」「口先だけで戦争を言うのではなく、いっそ本当に戦争でも起きて(すべてひっくり返って)くれればいい」などとする反応が見られるという。
戦争の危機を煽って国民の結束を促すのは北朝鮮の古典的な宣伝手法だが、そのようなやり方が通じる余地は、北朝鮮社会にもあまりなくなっているようだ。