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北朝鮮は南北経協の拡大など、対外的には開放に向けた姿勢を見せているが、それに反して国内で市場に対する本格的な統制に乗り出し、その背景に関心が集まっている。

朝鮮労働党は10月3日に、「市場に対する正しい認識を持ち、人民の利益を侵害する非社会主義的行為の根を絶とう」という内部文件を下し、市場に対する実質的な規制を強化している。この文件は40歳未満の女性の商売を禁止して、国営の工場、企業所などの職場に復帰することを命じている。

北朝鮮の専門家らはこうした最近の措置について、市場を通じて成長した新興の金持ちが権力を持つことを牽制して、市場に流入する外部情報と文化の流通を阻むための意図であると解釈している。

ファイナンシャルタイムス(FT)は20日、北朝鮮国内で資本主義市場体制が芽生え、閉鎖的な北朝鮮経済の根幹を搖るがし、政権存続の基盤自体を脅かす可能性があると懸念されていると報じた。

北朝鮮国民の生活に欠かせない市場に、当局が本格的な統制を始めたのは、金正日体制の生存戦略と密接な関係があるという指摘だ。

90年代半ばの市場経済の活性化

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1990年代半ばに、配給ができないほどに北朝鮮経済は没落段階に入った。数百万人が死亡した中、生き残った住民たちは国家の配給制の代案として市場を選択した。

最初は家財道具を売り、後には国の資源に手を出した。住民は海に出て魚をとって、山で松茸や長芋を掘り、遺跡から骨董品を掘り出して、川で砂金を採取。それらを市場で売ったり、中国に密輸出したりした。

それでも足りず、精練所から銅、コバルト、プラチナなどの金属を盗んだり、工場や企業所で、電動機や発電機などの生産設備を取り外したりして中国に売り払ってしまった。

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政府の厳しい取り締まりにもかかわらず、国営の工場や企業所は資材や設備をことごとく奪われたが、そのおかげで国民は最低限のカネを手にできた。また、脱北者の北朝鮮国内の家族に対する送金も大きな役割を果たした。

購買力が高まった北朝鮮国民は、国内の生産品だけでは需要を満たすことができず、中国に頼るようになり、中国製品の大量流入が始まった。それを通じた市場の活性化で、一般の住民はなんとかその日暮らしでしのげる程度になった。

国家資源の対中輸出、中国製品の大量流入、このすべての流通の中心が市場だった。市場はかつて、北朝鮮政府が許容した社会主義の過渡的段階としての、農民市場とは完全に性格が異なるものだった。

新しい市場の活性化

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政府は、経済が破綻状態に直面すると、生産企業所の競争力を高めるために、2002年7月1日に経済改善措置を断行した。

当時、北朝鮮政府の予算は破綻直前だった。工場の稼動が止まり、国家の資源を個人が売買して、国庫はがらんと空になった。労働者や公務員はもちろん、大学教授まで月給をもらうことができなくなると、政府は紙幤を刷って国庫を満たした。

労働者の月給が平均10〜15倍上がったが、通貨量の増加は深刻なインフレ現象をもたらした。2002年6月30日に、北朝鮮の貨幣とドルの市場為替が220:1だったが、経済改善措置から9ヶ月後には1800:1となった。

米国の外交専門紙フォーリン・ポリシーは、今年も北朝鮮を世界最悪の通過膨脹国家と指定し、北朝鮮が急激なインフレーションに苦しんでいると指摘した。フォーリンポリシーは7.1措置以前と比べて、北朝鮮の米の価格が550%上昇したと指摘した。北朝鮮のコメ価格は市場で最も価格が上がらない品目の1つだ。

こうしたインフレーションが持続すればするほど、住民は市場に頼るようになった。経済改善措置以後、市場に対する規制が緩和され、市場は更に拡大した。

市場の活性化による体制脅威の増加

FTは北朝鮮の住民が、ますます経済的な自立を追求するようになれば、体制全般に及ぼす波及効果のために政府の悩みが深刻になっていると説明した。

北朝鮮政府の市場に対する憂慮はおよそ3種類ある。

1つ目は市場を通じた外部情報と文化の急激な拡散だ。北朝鮮の市場で、最も高値で取り引きされる品物は韓国と日本の製品だ。韓国と日本の製品に対する選好度が高いほど、韓国と日本に対する評価と好感も高まる。

北朝鮮で外国のVCD商売をしていたある脱北者は、「平城(ピョンソン)の市場だけでも取り締まりを避けて、韓国のドラマと外国の映画のCDを売る商人が100人以上いる。1人が少なくとも数百枚、多くて2千枚以上持っている。お上(政府)が取り締まりに乗り出しているが、抑えきれない。今まで流通したVCDは数百万枚を越える」と証言した。

2つ目は北朝鮮の住民が市場を通じて自給自足し、個人主義が広まったという点だ。北朝鮮社会全般に不正腐敗がはびこり、政権機関の権威が後退した。兵士人が突然、盗賊手段に変わるのも日常的なことだ。こうした個人経済の拡大による政権危機の拡大には、特別な解決策がないという指摘が出ている。

最後に計画と市場の共存という混乱の中で、北朝鮮の住民はお金を稼ぐためにはあらゆる手段を動員する状況に至った。個人経済の拡散による違法行為の増加は、深刻な治安の不在をもたらした。

幹部、病院、機関の職員は、国連や先進国から入ってきた援助物資を市場に横流しし、軍隊は軍糧米と配給物資を市場で売っている。国家が麻薬の密売と偽造タバコ、偽造ドルなどを流通させている中、住民の逸脱行為はあまり驚くべきことではないだろう。

実際に、国家の統制が及ばない所では、各種の犯罪と財産の略奪行為が起こっている。中国の丹東に来た50代の女性は、自分が訪問した黄海道(ファンヘド)のある地方について、「商人に対する軍隊と暴力団の略奪の水準が度を越えた」「山犬と狐だけが暮らしているようだ」とまで言った。

市場の統制措置が及ぼす影響

このように、北朝鮮の市場の拡大は、金正日政権の危機を深化させる可能性が非常に高い。市場を統制する措置も住民の反発を呼び、政権の強化とはかけ離れた措置になる可能性がある。

北朝鮮政府は今年下半期から、体制維持のために市場を統制する選択をした。一部では北朝鮮政府が外部の支援を通じて、配給制の復帰を念頭に置いている可能性もあると言われている。だが、北朝鮮の体制が持続的な改革開放を選択しない限り、配給制を実施できる水準の食糧を確保することは容易ではない。

また、市場に対する住民の依存度を見ても、市場の統制が北朝鮮政権に危機をもたらす原因になる可能性があると推測される。

北朝鮮の専門家である、中国延辺大学のカオジンジュ教授は、「金正日総書記は、住民の生存のために市場を黙認しているが、資本主義の拡散の速度が度が越えたと思った瞬間、直ちに取り締まりに乗り出すだろう」と語った。