本気なら重機関銃で全員射殺…金正恩「異様な演出」の舞台裏

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北朝鮮の金正恩総書記は18日、咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸州(ハムジュ)郡蓮浦(リョンポ)地区に建設される「連浦温室農場」の着工式に参加したが、これを報じた朝鮮中央テレビのニュースにはちょっと異様な光景が映し出された。

マスクを着用し、間隔を空けて整然と並んでいた軍の兵士らが、突然わらわらと駆け出し、金正恩氏のもとに殺到したのだ。

独裁国家である北朝鮮において、最高指導者の身の安全は国家の最重要事項だ。それを守るためには、国民の生命を含めどんなものでも犠牲にされる。当局は常に「反動分子」の動きを警戒しており、金正恩氏の面前で、多人数が規律違反をおかすなど考えられない。

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そんな事態が起きたら、人々は重機関銃の掃射でなぎ倒されるか、戦車で轢き殺されるのがオチだろう。逮捕され、公開処刑になる可能性もある。

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もちろん、軍の兵士たちもそのことを知っている。だから「元帥様(金正恩氏)を近くで見たい!」と思う兵士がいたとしても、いきなり本気で駈け出したりはしない。つまりこの日の光景は、金正恩氏の「人気度」を強調するための演出なのだ。大方、分隊ごとに並んだ兵士らが上官の合図に合わせ、「オレたちの番だ、いくぞ!」とばかりタイミングを合わせていたのだろう。

それにしても、選挙もない北朝鮮で、独裁者が「人気者のフリ」をする必要がどこにあるのだろうか。かつて故金正日総書記は、自分に向かって万歳を叫ぶ民衆を指し、「あれは本心じゃない」という趣旨のことを外国の要人に語ったとされる。同様に、金正恩氏もそれを知りつつ、彼らなりに必要な儀式をやっているのだろう。

金正恩氏はこの着工式の演説で次のように表明し、「民生重視」を強調した。

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「わが党中央は、東部前線の重要軍事基地を、国の経済と科学技術の発展で大きな役割を担い苦労している咸興市の労働者や科学者、咸鏡南道の人民に奉仕する近代的な野菜生産拠点につくり変えることを決心し、第8期第4回総会で連浦温室農場建設を今年の最も重要な建設対象として決定しました」

「重要軍事基地」を「野菜生産拠点」に作り替えるというのは、民主主義国家ならそれなりに大きなニュースかもしれない。しかし独裁国家の場合、どこに基地を作ろうが農場を作ろうが当局の意のままだ。国会が承認した計画と予算に従い、民間を説得して用地買収に当たる民主主義国家とはワケが違う。

つまりは「人気者のフリ」も「民生重視のフリ」も、壮大な茶番である。その一方、北朝鮮国民の要求はシビアであり、求めているのは経済政策の結果だけだ。成し遂げれば、金正恩氏の人気はついてくる。しかし、いつまで経ってもそれが出来ないからこそ、「フリ」でお茶を濁しているのかもしれない。