金正恩にたった1人で銃口を向けた、ある女性の「愛憎の炎」

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北朝鮮の朝鮮中央テレビが放映した旧正月(今年は2月1日)の祝賀公演の映像に、金正恩総書記の叔母で、2013年に処刑された張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長の妻、金慶喜(キム・ギョンヒ)元党書記の姿が確認された。

金慶喜氏が公開の場に姿を現したのは約2年ぶりだ。金正恩氏と李雪主(リ・ソルチュ)夫人の右隣の席で公演を鑑賞。ほかの観客たちと同様に立ち上がって喝采を送る金慶喜氏に対し、金正恩氏が座席を指さして着席するよう勧めるなど、両者の親しさを示すような場面も見られた。

一時、党組織指導部長のポストにあったとされる金慶喜氏は、金正恩氏が最高指導者に就任した後、後見人の役割を担った。しかし、2013年9月9日に開かれた建国65周年を記念する閲兵式(軍事パレード)以降はしばらく姿を見せず、同年12月に張成沢氏が処刑されて以降は、死亡説や幽閉説が流れたこともあった。

張成沢氏は生前、北朝鮮国内で隠然たる影響力を誇ったが、その権力の源泉が妻の血統にあったことは言うまでもない。ただ張氏は、実務能力にも優れていたがために多くの人を引き付け、それが後に「宗派分子」と見なされるようになる。また、権力を掌握した驕りから女性関係の逸脱も激しかったとされ、金正恩氏に追い落としの口実を与えることにもなった。

張成沢氏の処刑後には、彼の愛人だったトップ女優らも巻き添えになり処刑されている。

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金慶喜氏と張成沢氏は、大恋愛の末にゴールインしたことで知られている。韓国の情報機関・国家情報院の次長や大統領補佐官を歴任した羅鍾一(ラ・ジョンイル)氏の著書『張成沢の道』は、張成沢氏の処刑を報告に訪れた金正恩氏に対し、金慶喜氏が拳銃の銃口を向けたというエピソードを紹介している。

拳銃は即座に取り上げられ、大事には至らなかったというが、金正恩氏はほうほうの体で逃げ出したという。仮にその時、金慶喜氏が引き金を引いていたらどうなっていただろうか。

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それほど張氏を愛した金慶喜氏が夫を救えなかった背景について、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表は、次のように語っている。

「もともと病苦の中にあった金慶喜氏は2013年初め、体調が著しく悪化していました。しかしそのとき、張成沢氏は一度も妻を見舞わず7人もの愛人と享楽にふけっていた。それが金慶喜氏にも報告され、彼女を激怒させたのです」

金慶喜氏は、こんな夫に一面では愛想を尽かし、体制の永続を選択したのかもしれない。父親の急な死で、帝王学を十分に学べないまま最高指導者となった金正恩氏には、確かに後見人が必要だった。

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体制発足の初期、金正恩氏の異母姉である金雪松(キム・ソルソン)氏と金慶喜氏が補佐役として果たした役割は小さくなかったと見られている。