氏名:ホン・ナムフィ
年齢:40代後半
地域:平安南道成川郡
-職業は何ですか?
○○工場で管理成員をしていた。炭鉱が多く労働者が沢山住んでいる。でも今は仕事がなく作業場には行けない。世帯主(夫)は工場に行っている。生活費を稼げない。商売のために物を買いに来たが思い通りにならなかった。私が持って帰るものが家族の命綱になる。
-工場は生産が中断された状態なのですか?
昔私が働いていた時は大丈夫だったし生産実績もよかった。1990年代後半までは機械が動いていた。今は仕事がない。原料や資材もない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面-では労働者は出勤して何をするのですか?
工場全体で社会支援に行く。5月から農村支援に行く。農村支援に行って田植えをして6月には草取りをして、秋には収穫にも行く。
-決定的に生産実績が悪くなりはじめたのはいつですか?
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面苦難の行軍(1990年代中盤)の時期に工場がとまった。工場企業所が順番を決めたようにストップした。人々はお腹が空いていたので工場の設備を売り払った。機材のモーターの銅線まで全て売ってしまったので、復旧することができない。お金もない。苦難の行軍に入ってから配給をくれない。今もそうだ。
-配給は全くもらえないのですか?
名節や2.16(金正日氏の生誕記念日)、4.15(金日成氏の生誕記念日)には配給をくれることもある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面-配給をもらえないなら何を食べているのですか?
だから女達が外に出て商売をする。商売をしなければおかゆを食べることですら難しい。市場で商売をしてどうにか食べている。
-今までどんな商売をしましたか?
あれもこれも全部やった。服の商売もした。中国から入ってきた服を売った。沢山は売れずに何着かだけ売った。
-まわりに麻薬売買をする人が増えたと聞きましたが。
麻薬で商売をする人がいる。薬として使うと言って沢山買っていく。これが病気の人には効果がある。(実際北朝鮮では麻薬類として規定されているヘロイン等が治療用として使われており、解熱、鎮痛、消炎等に効果があると言われている)特に腰が痛い人達がよく麻薬で治療をする。癌の人も麻薬で治療する。麻薬を塗って熱を加えると癌細胞が消えると言われている。実際医者がそう言っていた。神経痛、炎症にもいい。私もやってみたが効果があった。
-そういった麻薬類は取り締まりの対象ではないのか?
麻薬を吸うのではなく、治療用で使うのでどうしようもない。誰も取り締まれない。取り締まるなら政府が病人を助けてあげなきゃならない。値段は少し高いがお金持ちはみんな使っている。死ぬ前に使ってみようという気持ちだから。
-家族はみんな1日3食食べていますか?
どうしても難しい。私がそれなりに商売をしているから1日3食は食べているが、そうでない人が3食全て食べることは難しい。トウモロコシを食べている。以前は配給をもらって食べていたが、今は配給もくれないので、トウモロコシだけ食べている人もいる。
-麺類やおかゆで食べつないでいる人はどれくらいですか?
最近商売がうまくいかないので麺類を売っている人は大変だ。お金を稼ぐ人は1日の稼ぎで1ヶ月食べて暮らせるが、そうでない人は麺類ですら食べることが難しい。おかゆを食べることもある。お金持ちは高級品で商売をするから、その人達は大丈夫だ。一般的に人民達は商売ができないから、なっぱみたいなものを握って外に出て、トウモロコシの麺と一緒に食べている。
-お米のごはんを食べる回数は?
それも、いい暮らしをしている人は沢山食べることができるし、貧しい暮らしをしている人は難しい。お米の価格が上がったのだが、労働者達の1ヶ月の労賃は多くもらっても2000ウォン。でもお米は1キロで2500ウォンだから、1ヶ月働いて1キロしか買えない。だから一般の労働者の収入が2000ウォン。朝鮮人の男達はみんな職場生活、組織生活をしなければならず、出勤のはんこを押さなければいけない。それで統制をするから。女達が商売をしてなんとか稼いで暮らしている。
-おばさんは何を食べていますか?
1日1食はお米のごはん。2食は麺類やおかゆを食べている。
-どうして生活が厳しくなったと思いますか?
何しろ食糧難だから。水害が起こって日照りが続いて農業ができないから。肥料をやらなければいけないのに十分な量がない。
-北朝鮮当局は2012年に強盛大国の扉を開くといい続けていますが。
できない。私は信じない。
-どうして信じないのですか?
国の暮らし向きがよくなることが強盛大国になることなのに、何もない状態で強盛大国になれるはずがない。朝鮮人は「中国が何かする」、「南浦で何かが起こる」、「お米が入ってくる」と言うが信じない。人々は(外部からの支援で)ひょっとしたらお金が入ってくるかもしれないと言うが、そんなことはたかが知れている。ただそう言っているだけだ。
-北朝鮮の大部分の人は信じていないということですか?
お上には信じていると言わなきゃ。でも信じていない。不満など絶対に言えない。南朝鮮(韓国)の安企部がここ(延吉)にあると聞いた。朝鮮にいる時は韓国という言葉さえも知らなかった。私達はただ党が言うことだけを聞いて生きているから、一般の人民はよくわかっていない。朝鮮では、分別のある言葉を発すると思想闘争といって追放されてしまう。
-金正日に対してどう思いますか?
正直に言って朝鮮の労働者達が思うこと。知識があって聡明な人達は、心の中では違った考え方をしていると思う。でも一般の人民達は教養を受ける。地方では朝鮮中央放送しか見ることができない。夕方の5時から始まって8時に終わるのだが、半分以上が将軍様が行軍指導したという話だ。将軍様がやったことばかりが放送されている。軍人達を訪問しておにぎりを食べながら車の中で仮眠をとって、人民のために働いているという。一般の人民はそれを見る。それでも少し違った考えをする人もいる。私も南朝鮮(韓国)のテレビを見たことがあるが、大統領も間違ったことをすれば検事に捕まるし、国会議員が過ちを犯したらなんとか、と放送で言っていた。でも私達にはそんな自由がない。自分の思うままにできない。
-ではおばさん自身は金正日をどんな人だと思いますか?
朝鮮にいる時はどうやっても事がうまくいかないから、朝鮮はどうしてこうなんだ、どうしてこんなにつらいんだと思っていたので、金正日が好きではなかった。好きでもないのにどうして南朝鮮はいい暮らしをして私達は貧しい暮らししかできないのかと考えた。平壌には立派な家が建っているのにどうして私はこの様なんだろう?平壌には立派な家が多いんだよ。
-金正日や上に対する不平不満が積もればデモが起こる可能性もあると思いますが。
ああ、街頭デモみたいなものね。朝鮮は人民よりも統治する側の人(幹部)の不満が多い。でも幹部達も言葉一つ間違えれば大変なことになるから、むやみに不満を言うことができない。保衛部(秘密警察)の手先が、人々がどんなことを話すか監視している。今でも彼らが個々人の動向を見て記録している。誰が出勤しなかったかを報告して管理している。
-住民達が貧しい暮らししかできないことに金正日が関係あると思いますか?
貧しい暮らししかしていないことは国家も知っている。どうしてそうなのか?よく外国を行き来する人達を通して聞くことになる。私達がどう思うか?軍事、核兵器も作って銃も作って、そこに入るものが多いから人民が飢えることになる。それでも政府は、軍事力を発展させなければまた植民地奴隷生活をすることになると教養する。
-まわりに飢え死にした人はいますか?
私は直接見たことはない。
-生活苦のせいで自殺する人もいますか?
厳しい生活をしているから生活苦で自殺する人もいる。自殺して死んでも上は自殺したと言わない。家族達が被害を受けるから。どこでどろぼうをして自殺して、ということは言わない。
-貨幣改革以前と以後、暮らしはどう変わりましたか?
貨幣改革は貧しい人よりもお金持ちをつぶした。人民達は開いた口がふさがらない。一定の物を確保した状態で貨幣交換をすれば、これほどまでに住民に被害はなかったはずだ。何もない状態で貨幣改革をしたから、人民の生活がもっと悪くなった。
-当時の状況を聞かせてください。
国家がどのように貨幣改革をしたかと言うと、1世帯当たり10万ウォンを出すと1000ウォンと交換してくれた。代わりに10万ウォンを交換すると1人当たり500ウォンずつ配慮金をもらえた。3人家族だと1500ウォンになる。貨幣改革以前はお金を持っていた人も、今は残されたものが何もない。本当のお金持ちはドルを持っているから大丈夫だった。中間層の商人への被害が大きかった。彼らによって物とお金が流通していたが、今はそれがないから市場でお金が回らない。
-おばさんはどうでしたか?
はじめはみんなよかった。10万ウォンを出せと言うが私達には1万ウォンもなく、お米が少しあるだけだった。貨幣交換をする時、私達にはお金がないから心配する必要がなかった。でもお金がある人はお金を全て変えることが出来ないから、お金がない人のところに行って代わりに変えてくれと言った。10万ウォンを変えると1000ウォンだが、これで200ウォンをくれると言った。そうするうちに、お金のある人達が「20パーセントにしよう」といった。さらに「50パーセントに、70パーセントに」という人が出てきた。
-はじめはよかったというのはどういう意味ですか?
10万ウォンを出して1000ウォンをもらって、うちの家族は3人だから配慮金1500ウォンをもらって、2500ウォンが手に入った。国家が新しい貨幣に合わせて価格を落としてお米を15ウォンにした。その時お米を買っていたら、その後はお米が高くなったから利益があったはずだ。私達はお米が安くなると信じて待っていた。ついに新しい世界が来るのかと思った。でも急にお米の値段があがって、結局は元通りになった。2000ウォンに。なけなしのお金も空に飛んでいってしまった。
-今はどうですか?
物がよく売れていた人は以前はいい暮らしをしていた。お金がない人は物もないから、昔の状態に、いい暮らしをしている人がもっといい暮らしをするようになった。でも最近は中間層の商人にお金がなくて商売がうまくいかない。
-北朝鮮当局は主に何の話をするか?
今やCNC技術を導入しているし、自動車技術が高くなったので生活水準がよくなると言っている。でも中国ではCNCを導入して50年が経ったと聞いた。北朝鮮にいる時はそうなのか、としか思わなかったが、生活水準はよくならなかった。不満があっても口には出さない。ただ稼いで食べて暮らすことしか知らないからいいと言うだけだ。心の底からいいと思っている人がどこにいるだろう。それでも国家や幹部の悪口は言う。最近はみんなそうだから。