女性経営者「ハンマー処刑」も口コミで…金正恩の新たな恐怖政治

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18人――これは、北朝鮮の北東部、人口約230万人の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の安全局(県警本部)の勾留場(留置場)で、今年の第4四半期に入ってから非公開処刑された人の数だ。

北朝鮮ではこれまで、公開処刑が頻繁に行われていた。残酷な光景を見せることで国民の恐怖を煽り、犯罪抑止に繋げようという意図から行われていたが、国際社会からの批判を気にしてか2015年ごろからあまり行われなくなっていた。それが2019年ごろから復活したが、最近になって再び、非公開で処刑が行われるようになりつつあると、咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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処刑された18人は、「韓流取締法」とも呼ばれる反動思想文化排撃法の違反者だ。いずれも中国キャリアの携帯電話を使って密輸や送金ブローカーを営んでいた人々で、国外に国、党、軍の機密を売り渡し、韓流コンテンツを輸入したという容疑だ。

最近、反社会主義・非社会主義連合指揮部(82連合指揮部)が活発に活動を繰り広げ、国境に接した地域で次から次へと人を捕まえており、それに伴って処刑される人も増えている。

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北朝鮮の刑法では国家転覆、テロなどの反政府的な活動、麻薬の製造、密売、故意の殺人に対する最高刑が死刑となっているが、それに加えて反動思想文化排撃法で、韓国のコンテンツを国内に流通させた者に対しても死刑判決を下せるようになっている。

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処刑が非公開で行われていることについてだが、公開にすることにより、処刑を行った事実が海外に流出し、「正常国家」に向かう姿勢をうかがわせている金正恩体制のダメージになりうるとの判断に基づくものだと思われる。

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情報筋は、社会安全省(警察庁)と朝鮮労働党法務部が今月5日に下した「法別刑執行方式付則」と題した規定に、上述の行為に対してはすべて室内で処刑せよとの項目を入れていることを指摘した。

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「『悔悛を全く見せない悪質反動分子どもは、職位、功労、出身成分(身分)、年令を問わず、無慈悲に処刑し、必要とあらば刑法付則を作り、罪状の重い犯罪を容赦なく処断すべき』という社会安全省の方針に対して、党法務部から承認を受けている」(情報筋)

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コロナ鎖国による経済難で不満を抱く北朝鮮国民が増えていると伝えられているが、即決裁判と室内処刑で恐怖を煽ろうとしているものと思われる。昨日まで普通に暮らしていた隣人が、翌朝になって忽然と姿を消した場合、北朝鮮の人々は、「管理所(政治犯収容所)に連れて行かれたのかもしれない」と考え恐怖を覚えるが、秘密裏の処刑の場合でも同じ効果があるということだろう。

実際、昨年3月には軍の物資を横領していたとして逮捕された焦点の女性社長がハンマーで撲殺される形で処刑されたが、非公開で執行されたにもかかわらず、残忍な手法が口コミで市民に広がった。

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地域とのしがらみがないことから、違反者を次々に取り締まっている82連合指揮部だが、活動が長期化するにつれ、しがらみが生じ、ワイロなどで骨抜きにされるのが北朝鮮のいつもの流れだ。

それは、短期決戦で強力に抑え込まなければ、根絶は難しいということを意味するが、厳しい取り締まりにもかかわらず、韓流コンテンツの流通はなおも行われており、根絶は不可能に近い。