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「不法に中国の領土に入った北朝鮮人は難民ではない。彼らは中国法律に違反して、中国に入った。中国政府は一貫して国内法、国際法、人道主義の原則に基づき、北朝鮮人の不法入国の問題を適切に処理する」

これは2017年7月に中国外務省の報道官が明らかにした、中国政府の脱北者に対する公式の立場だ。だが、これは原則論に過ぎず、人道主義に反して脱北者を北朝鮮に強制送還することを続けてきた。その一方で、中国人と結婚した北朝鮮女性は送還せずに管理下に置こうとする措置も取っているが、公式には発表されていない。

(参考記事:脱北女性の「強制結婚・人身売買」で中国に態度変化の兆し

このように、中国政府の脱北者に対する対処方針は、実際に現れた現象を通じて読み解くしかない。デイリーNKの複数の情報筋は、自国内の脱北女性に対する中国政府の新たな動きについて伝えている。

デイリーNKの中国の情報筋によると、北朝鮮と国境を接する中国・吉林省の長白朝鮮族自治県の公安局は今年9月末から、、北朝鮮女性と同居する中国人の家を訪れ、携帯電話の記録を確認しているという。

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別の情報筋は、黒龍江省でも公安局が村々を回り、北朝鮮女性の動向を調べていると伝えた。彼らは、「思想問題をよく把握しなければならない」として、大々的な調査を行っているとのことだ。この「思想」が何を指しているかについて、情報筋は言及していない。

注目されるのは、公安当局が北朝鮮女性の外部との繋がりに関心を持っている点だ。調査の際に「今まで北朝鮮と韓国に電話をしていたなら自首せよ」「よく電話をしていた別の北朝鮮女性がいれば名前を出せ」と伝え、「今後、北朝鮮や韓国と連絡して摘発されれば、無条件で追放する」と警告したとのことだ。

韓国との連絡だけを問題視するのならば、北朝鮮当局からの何らかの働きかけがあったことが考えられるが、北朝鮮との連絡まで含めて問題視している点が注目される。一連の調査は市や県ではなく、その上の地方行政単位である省が行っており、異なる省で同時に行われていることを見ると、中央政府から何らかの指示があったようだ。

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今回の調査について情報筋は、今後増加が見込まれる脱北と人身売買を事前にブロックするための中国政府の指示に基づくものだと伝えた。北朝鮮国内にいる脱北希望者や双方にいる脱北ブローカーと連絡を取り合い、脱北を幇助する在中北朝鮮女性が少なからず存在することを念頭に置いた調査だろう。

北朝鮮のコロナ鎖国による深刻な物資と食糧不足で、脱北して中国に向かう人は増えているようで、摘発して送還しようにも北朝鮮がコロナを理由に身柄引き受けを拒否していることから、収容所が満杯になっていると伝えられている。

(参考記事:中国の収容所が「超満員」に…食糧難で脱北者が増加

一方で中国当局は「家庭を守り波風を立てずに暮らすのなら、ここにずっといてもいい」とも告げており、かつてのように、中国人の夫、子どもがいても無条件で北朝鮮に強制送還し、家庭を破綻に追い込むことは、社会不安に繋がるとも考えているようだ。

(参考記事:脱北女性の深刻な精神疾患、中国の調査で明らかに